未だ本能寺にあり

【小説】未だ本能寺にあり(51) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(15)【羽柴秀吉譚】「解(わか)りませぬ……申し訳ございません」 儂(わし)は大将の信忠様に素直に頭(こうべ)を垂れるほかなかった。その時じゃ。目の端に捉えた。明智が薄い笑みを浮かべておるのを。

【小説】未だ本能寺にあり(50) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(14)【羽柴秀吉譚】 己のしくじりによって上様を憤慨させた時はどうするか。下手な言い訳なんぞは火に油を注ぐようなもの。だからといって黙していても終わり。

【小説】未だ本能寺にあり(49) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(13)【羽柴秀吉譚】 一方、儂(わし)も中国筋を早々に鎮めれば、同じく山陰攻略を任せられる目が出て来る。つまりは早い者勝ち。儂と明智、どちらが山陰に進めるかの競争という訳じゃ。

【小説】未だ本能寺にあり(48) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(12)【羽柴秀吉譚】 儂(わし)は何としても負けたくなかった。明智もまた同じ想(おも)いじゃったろうよ。当人と直にそのことを話したことは終(つい)ぞなかった。じゃが、これは間違いない。

【小説】未だ本能寺にあり(47) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(11)【羽柴秀吉譚】 本能寺、か――。 話の後、お主が向かったということは耳にした。 惨(むご)い有様じゃろう。何もかもが真っ黒じゃ。片付けたいのは山々じゃが、今は敢(あ)えてそのままにしておる。

【小説】未だ本能寺にあり(46) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(10)「本能寺……」 全ての闇が集約されたような光景に、八右衛門(はちえもん)は喉を鳴らして呟(つぶや)いた。 翌二十日の秀吉との対面は戌(いぬ)の下刻(午後九時)より。

【小説】未だ本能寺にあり(45) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(9)「それに……今、とある噂(うわさ)が広がっている」 武則(たけのり)はわざわざ足を止め、小さく手招きをした。八右衛門(はちえもん)がそっと近づくと、武則は耳朶(じだ)に口を寄せて囁(ささや)い…

【小説】未だ本能寺にあり(44) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(8)「え……一睡もされないので?」「三日程度なら造作もないが、京に来てもう六日も経(た)っているのだぞ。流石(さすが)に眠りもする。

【小説】未だ本能寺にあり(43) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(7) さらに信長には僅(わず)か二百ほどの供回りしか付いていなかったのに対し、明智軍は数千で攻め寄せたとのこと。

【小説】未だ本能寺にあり(42) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(6) 羽柴家を担うと目されるが故に、今のうちから小姓衆に擦り寄っておこうとする者、そうでなくとも目を付けられないように配慮する者が後を絶たない。

【小説】未だ本能寺にあり(41) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(5) 己の身分が上ならば別かもしれないが、先刻の様子から彼らは己が何者か知らぬし、どのような立場の者かも知らない。

【小説】未だ本能寺にあり(40) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(4) 本能寺を邏(みま)わる彼らもまた己を知らぬ。が、一定の敬意を窺(うかが)わせるのは、己が一応は武士の身形(みなり)であり、仮に他家の者であっても軋(あつ)轢(れき)を避けようとするためであろ…

【小説】未だ本能寺にあり(39) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(3) 往来ではようやく瓦礫(がれき)などの撤去作業も始まっているが、それらに従事しているのは羽柴家の者がほとんど。

【小説】未だ本能寺にあり(38) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(2) 織田信長の骸(むくろ)は未だ出ていない。誰かが見つけて、あるいは見つけたと言い張って、利用しようとする者が出て来ないとも限らない。そこで本能寺には昼夜を問わず、数十人の見張りをつけているらし…

【小説】未だ本能寺にあり(37) 今村翔吾・作、木村浩之・画有料鍵

二章 秀吉の焦り(1) 秀吉は一気に捲(まく)し立てると、慌ただしい足取りで部屋を出て行った。自然、八右衛門(はちえもん)と三成が残される格好となる。「しくじったな」 三成は苦々しく零(こぼ)す。
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