有明抄
街角から消えたもの
映画「男はつらいよ」シリーズで、渥美清さん演じる寅さんは、遠い旅先から葛飾柴又のだんご屋の実家に電話をかける。いつも決まって店先の赤電話か電話ボックスから。
戦時下と重なる
材料は水に半日ひたしたドロドロのうどん。小麦粉か、すりおろしたイモを加えて塩コショウ、カレー粉などで味をつけ、鍋で焼いたら出来上がり。戦時中の婦人雑誌にあった「うどん焼」である。
新生児の取り違え
2013年に公開された福山雅治さん主演の映画「そして父になる」は新生児の取り違えが発覚し、わが子と思って育てた他人の子をとるか、血のつながった子どもをとるか、その苦悩を通して真の父親になっていく主人公の姿が描かれる…
孤独な旅人
米国にも俳句をたしなむ人はいるらしい。いちばん親しまれているのは、やはり松尾芭蕉かと思えば、さにあらず。種田山頭火だという。
分かったような気持ち
ひとの身の上話や悩みごとを聞いて、「分かる、分かる」と相づちを打つことがある。相手の抱えているものが重ければ重いほど、語気を強めて。
谷口緑さんをしのぶ
漢詩をあしらった久留米絣(がすり)のドレス「蘭亭」や数々のトロフィーはデザイナーとしての輝かしい実績を伝える。一方で、「緑ドレメ」の愛称で親しまれた「緑ドレスメーカー服飾専門学校」の創設者としても知られる。
何をのこすか…
昭和の二枚目スター長谷川一夫は晩年、40年近く連れ添った妻に先立たれた。
不老不死の手段
秦の始皇帝の命を受け、「不老不死」の薬を探して旅に出たとされる徐福は、佐賀をはじめ各地に伝説を残す。それから約2200年。
万博をどう読むか
若い夫婦が幼子2人と老いた父を連れて新天地をめざす。山田洋次監督の映画『家族』である。
学ぶ意義
公開中の映画「35年目のラブレター」は貧しい家庭に生まれ、小学校を卒業しなかった男性が主人公。彼は退職後、60代で夜間中学校に通い始める◆読み書きは勉学の基礎。学ばなければ漢字もひらがなもただの記号にすぎない。
動物にたとえれば
19世紀末のドイツで、ハンスという馬が話題をさらった。飼い主が算数の問題を出すと、ひづめを地面に打ちつけて見事に答えを当てる。
迷えるヒツジ
中国の故事にある。隣人が「若い者を貸してくだされ」と駆け込んできた。聞けば、羊が1匹逃げ出したという。逃げた方向は分かれ道ばかり。手分けして追わなければ間に合わない。
トランプ関税
今年の流行語大賞はこれで決まりかも。最近のニュースにそう思う。「トランプ関税」である。
子どもの天国
〈日本を旅行すると、先ずどこでも子供がいることに気づく〉。明治初めに来日した米国の動物学者モースは書いている。朝6時半から学校へ向かう子、親の仕事を手伝う子、子守をする子…。
老いのかたち
人の心は不思議なものである。寝たきりの90代の女性に、研究者が枕元で質問した。「今、健康だと思いますか?」。答えは「元気だよ」。起き上がることもできず、状態がいいようには見えないのに。
韓国大統領の罷免に思う
世の中にはたくさんの種類の「力」がある。その中で厄介と思う力が「権力」だ。体力や筋力は自分で育てられるが、権力は簡単には手に入らない。
あんぱんが教えること
ちょうど150年前の4月4日。明治天皇と皇后の花見の席に、新趣向の茶菓子が献上された。それが、あんぱん。だからきょうは「あんぱんの日」◆時は流れて昭和44(1969)年、ちょっと変わった大人向けの童話が雑誌に載った。
ほんとうの理由は…
とても喜ばしいことを社交辞令で「慶賀に堪えない」という。大正7(1918)年8月、神戸の商社・鈴木商店が焼き討ちされた。直後、会社に電報が届いた。「ケイガニタヘズ」。
地名の表記
テレビで時々、聞き慣れないカタカナを耳にする。
開花の時季
桜がほころび始めたと思ったら、もう盛りを迎えている。各地から届く開花の便りも、関東以西は一斉に咲きそろった印象がある。
動画