小説
【小説】未だ本能寺にあり(102) 今村翔吾・作、木村浩之・画
大殿の命(めい)とあれば、明智家の者は進んで従うだろう。大抵のことならば疑問を挟まずにな。じゃが、此度(こたび)はその大抵の枠を明らかに超えておるからのう。困惑してしまうのも無理はないことよ。
【小説】未だ本能寺にあり(101) 今村翔吾・作、木村浩之・画
猛然と突っ込んでくる人馬に、泡を食って思わず道を譲る者がほとんど。逃げ遅れた一人が青鹿毛に撥(は)ね飛ばされ、もう一人が勝介(かつすけ)の振り下ろした太刀の餌食となった。 俺か。
【小説】未だ本能寺にあり(100) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(29)【安田作兵衛譚】 駒井(こまい)、よいから訊(き)け。俺の話を寸断してしまうとな。その悶々(もんもん)とした面を見ているほうが、気が散って仕様がないわ。
【小説】未だ本能寺にあり(99) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(28)【安田作兵衛譚】 だが、建物の中に踏み込めば別じゃ。板を踏む音はかなり響くでな。それに本能寺の多くの廊下が鴬(うぐいす)張りになっていたようじゃ。
【小説】未だ本能寺にあり(98) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(27)【安田作兵衛譚】 そりゃあ、戦では将が声を嗄(か)らして指揮を執ることもある。
【小説】未だ本能寺にあり(97) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(26)【安田作兵衛譚】 俺は本能寺の中に入るのは初めてじゃった。立派な建物が並んでおり、長い渡り廊下で繋(つな)がっているものもあった。
【小説】未だ本能寺にあり(96) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(25)【安田作兵衛譚】 寺内に通じるのは南門と東門の二か所のみ。俺は南門におった。このような時、我先に手柄を挙げんと、誰もが先頭へと行きたがるのが常よ。
【小説】未だ本能寺にあり(95) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(24)【安田作兵衛譚】 桂川の浅瀬を渡る。この辺りではまだ駆けることはせぬ。しかし、気が逸(はや)るせいもあって、どうしても脚が速くなる。
【小説】未だ本能寺にあり(94) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(23)【安田作兵衛譚】「皆の衆、すでに不審に思っておることじゃろう」 まずはそう仰(おっしゃ)った。殿の声はよく通った。程よく錆(さ)びておってな。
【小説】未だ本能寺にあり(93) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(22)【安田作兵衛譚 この時点まではまだ気付いていない者もいただろう。しかし、大殿からの触れで誰もが察した。今にも戦を始めんとする支度の指示じゃからな。
【小説】未だ本能寺にあり(92) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(21)【安田作兵衛譚】 俺は桂川へと向かった。そこで本軍を待つ段取りになっておったでな。この時は一人じゃ。箕浦(みのうら)、古川と一緒ではない。
【小説】未だ本能寺にあり(91) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(20)【安田作兵衛譚】 狡兎(こうと)死して走狗烹(そうくに)らるという故事を知っておるか。まあ、そうじゃろう。
【小説】未だ本能寺にあり(90) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(19)【安田作兵衛譚】 気乗りせぬのは箕浦(みのうら)や古川も同じだったらしい。自然と三人の足が揃(そろ)うようになった。
【小説】未だ本能寺にあり(89) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(18)【安田作兵衛譚】 今となっては俺たちが何を目安に集められたか判(わか)る。
【小説】未だ本能寺にあり(88) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(17)【安田作兵衛譚】 ちと、喉が渇いた。酒は持っておらぬか。では、外の見張りに持ってこさせてくれ。酒が入ったほうが舌もよう回るぞ。よしよし、久しぶりじゃからのう。
【小説】未だ本能寺にあり(87) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(16)【安田作兵衛譚】「上様に急(せ)かされておるのだ」 一瞬の間を置き、殿はお答えになった。 なるほど、そういうことかと得心した。上様は気の短い御方じゃと聞く。
【小説】未だ本能寺にあり(86) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(15)【安田作兵衛譚】 何故、わざわざ夜に発(た)つのかと誰もが思ったじゃろう。
【小説】未だ本能寺にあり(85) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(14)【安田作兵衛譚】 俺が陪臣(ばいしん)の割に名が知られておるのは、数々の武功を上げてきたから。そこは自負しておる。
【小説】未だ本能寺にあり(84) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(13)【安田作兵衛譚(たん)】 甚内(じんない)、助作(すけさく)が一時、明智家の寄騎(よりき)となった縁でな、たまさか安土(あづち)で顔を合わせて酒を酌み交わしたこと…
【小説】未だ本能寺にあり(83) 今村翔吾・作、木村浩之・画
三章 逸(はぐ)れ烏(がらす)の託(かこ)ち(12)「いいえ。安田様のお話を聞かせて頂きたいのです」 作兵衛は訝(いぶか)しそうな表情で、「……それだけか?」 と、尋ねた。
動画