簡単なヘアアレンジで おしゃれにヘルメット着用を
一般社団法人日本自動車連盟(JAF)と、全国的にシェアサイクル事業を展開するCharichariは、理美容専門学校アイ・ビー・ビューティカレッジ(佐賀市)と連携して、自転車用のヘルメットをかぶっても崩れにくい髪型を紹介するユニークなイベントを開催した。今月で1年半を迎える全ての自転車利用者に対するヘルメット着用の努力義務。全国的に着用率が低調な中、業種間の垣根を超えて若い世代をターゲットにした自転車利用時のヘルメット着用促進に乗り出した。

かぶっても崩れにくい髪型
7月下旬、JR佐賀駅の駅前交流広場で「スタイルも交通マナーもアップ! 自転車ヘアアレンジ!」とのテーマで、若い世代を対象にした自転車利用の交通安全を呼び掛ける啓発イベントが開かれた。広場に駐車していた佐賀県警察の交通安全教育車の隣には、市販されているさまざまな形をした自転車用のヘルメットが机にずらりと並んでいた。


この日のメインイベントは、学校法人佐賀理容美容専門学校アイ・ビービューティカレッジの学生たちによる、自転車用のヘルメット着用に対応したヘアアレンジの披露だった。「今から、自転車のヘルメットをかぶっても崩れにくいヘアスタイルを披露します」。金髪やロングヘアといったいろいろなヘアスタイルの若い男女が広場に立ち、自転車用のヘルメットを持ちながら、駅から出てきた高校生や、親子連れらにイベントへの参加を促していた。
同校は、JAFから「自転車のヘルメットをかぶっても髪が崩れにくく、髪を簡単に手直しできるヘアアレンジができないか」との相談を受けていた。

■学生自らヘアアレンジ案
教務主事の野中了子先生は「課題として学生に取り組んでもらった。髪型に気を使う年代なので、ヘルメット着用を促すヘアスタイルについて、真剣に考えていた」と話す。
6人の学生が、「おしゃれ」と「交通安全」をコンセプトにした5通りのヘアアレンジを考案。その一つに、ロングヘアの女性をモデルにしたアレンジを紹介。髪を三つ編みにして後頭部にまとめてからヘルメットを着用する実演を披露した。考案した学生は「ヘルメットをみんなにかぶってもらうため考案した」と説明した。
学生たちは、それぞれ考案したヘアアレンジでヘルメットをかぶり、県警察の自転車シミュレーターで自転車の安全な乗り方を体験したり、実際にCharichariのシェアサイクル用自転車を運転。このあと、ヘルメットを脱いで、学生が考案した崩れにくいヘアアレンジの成果を披露した。最後に「あごひもをきちんと締めないとヘルメットをかぶった意味はありません」と締めくくった。

■ヘルメット着用の徹底を
こうした、若い年齢層へのヘルメット着用を促すには深刻な事情がある。警察庁の調査によると、2023年の佐賀県の自転車利用者のヘルメット着用率は23・4%と全国平均13・5%を上回っているが、高校生以上になると途端に着用率が落ちる。自転車に関する交通死亡事故で、ヘルメット着用時と比べ非着用時致死率は約2倍で、致命傷となる部位の半数を「頭部」が占める。
佐賀県では過去5年間(2019~23年)の自転車が関わる交通事故の死者数は13人。そのすべてがヘルメットを着用していなかった。県警察は「ヘルメットを着用することは、致死率を大きく下げるため、大切な命を守ることにつながる。すべての自転車を利用する方に、ヘルメット着用の重要性をしっかり理解していただくことで、へルメットの着用を促進していきたい」と語った。また、今回のように他業種事業者と連携した取組に、「ヘルメット着用に抵抗がなくなるよう取り組み、着用率アップにつなげていきたい」と期待を募らせた。
こうした自転車の安全運転の啓発活動へのJAFの取り組みについて、同佐賀支部推進課の今村賢司課長は「こういったイベントを通して自転車の利用者に、ヘルメット着用をはじめとした交通ルールの遵守を呼び掛けていくことで、佐賀県で悲惨な事故が発生しないように、今後も自動車ドライバー以外への啓発活動も継続していきたい」と強調した。また、Charichariで事業開発を担当する中嶌れいさんは「佐賀市は、あらゆる世代でシェアサイクルの需要が見込まれる。利用者の命を守るためにも、こういったイベントでヘルメット着用の徹底を呼び掛けたい」と話した。
防犯OPICS
自転車の「ながら運転」「酒気帯び運転」
11月1日から法律違反行為に規定
道路交通法の改正で11月1日から、自転車利用の2つの違反に対する新たな罰則が規定される。対象行為は、自転車を利用中のスマートフォンや携帯電話を使用する「ながら運転」と「酒気帯び運転」。
自転車に乗りながらスマートフォンなどを手で保持して通話する行為・画面を注視する行為が対象で、違反者は6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金。交通の危険を生じさせた場合は1年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる。
これまで罰則規定がなかった自転車での酒気帯び運転も、違反者は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられる。その他にも、自転車の提供者や種類の提供者・同乗者にも罰則が規定された。
この二つの違反を含む交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反(危険行為)を繰り返した人は、自転車運転者講習の受講の命令を受ける。