小説「未だ本能寺にあり」
【小説】未だ本能寺にあり(71) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(35)【羽柴秀吉譚】 そう、上様は自らの死を装って、今も何処(どこ)かにお隠れなのではないかということだ。 いや、お主の言いたいことは解(わか)る、八右衛門(はちえもん)。
【小説】未だ本能寺にあり(70) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(34)【羽柴秀吉譚】「上様にゆるりとして頂きたいのは山々です。しかし、暫(しば)しお待ちを……」 儂(わし)は眉間に指を添えて思案しつつ続けた。
【小説】未だ本能寺にあり(69) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(33)【羽柴秀吉譚】 儂(わし)には上様の仰(おっしゃ)る意味が解(わか)った。もし上様がお亡くなりになれば、否(いや)が応でも誰かが後を引き継がねばならないということじゃ。確かにいずれはそうなる。
【小説】未だ本能寺にあり(68) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(32)【羽柴秀吉譚】 上様が儂(わし)を手強(てごわ)いと思うということは、則(すなわ)ち、儂をお認めであるということ。これが嬉(うれ)しくないはずがないじゃろう。
【小説】未だ本能寺にあり(67) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(31)【羽柴秀吉譚】 戦いだけではないぞ、上様は時には裏を掻(か)いて騙(だま)し、下げたくもない頭を下げ、ありとあらゆる手を駆使して走ってこられたのじゃ。 しかし、今はどうじゃ。
【小説】未だ本能寺にあり(66) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(30)【羽柴秀吉譚】 また上様にしか出来ぬことも仰山あるじゃろう。それを重々承知で今日まで走って来られたのじゃ。儂(わし)なんぞが安易に慰労を口にして良い訳あるまいて。
【小説】未だ本能寺にあり(65) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(29)【羽柴秀吉譚】「遜(へりくだ)るな」 上様はぴしゃりと言い放った。「ははあ……」 しまった、返答が間違っていた。失言じゃったな。
【小説】未だ本能寺にあり(64) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(28)【羽柴秀吉譚】「昨年十月二十五日に鳥取城は開城せしめ、これにてまず因幡(いなば)の平定は成りました。
【小説】未だ本能寺にあり(63) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(27)【羽柴秀吉譚】「来たか」 上様は天主の廻縁(まわりぶち)から振り返って頬を緩めた。その時、儂(わし)の胸に言い知れぬ不安が過(よ)ぎった。叱責を受けるからではない。
【小説】未だ本能寺にあり(62) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(26)【羽柴秀吉譚】 余程、ご機嫌が良かったに違いない。いや、むしろ良過ぎて不安になったほどじゃ。この後に打って変わって叱責が待っているのではないかとな。
【小説】未だ本能寺にあり(61) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(25)【羽柴秀吉譚】 城持ちとなった頃までは、儂(わし)が最も上様の心を解(わか)っていると自負しておった。
【小説】未だ本能寺にあり(60) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(24)【羽柴秀吉譚】 仕掛けはどうということはない。儂(わし)だけが小姓衆と懇意にしていただけ。安土(あづち)に赴く時は、上様への献上品とは別に、小姓衆の一人一人に決まって贈り物をしておったのよ。
【小説】未だ本能寺にあり(59) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(23)【羽柴秀吉譚】 後に見た者から聞いた話じゃが、明智は儂(わし)の鳥取城攻めの報に触れて唖然(あぜん)としておったという。そこまでやるとは思っておらんかったのだろうな。
【小説】未だ本能寺にあり(58) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(22)【羽柴秀吉譚】「筑前殿」 官兵衛がずいと顔を寄せた。その両眼が妖(あや)しく光っておった。
【小説】未だ本能寺にあり(57) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(21)【羽柴秀吉譚】 最強の敵である本願寺に対し、 ――織田家と和議を結ぶべし。 と、正親町(おおぎまち)天皇が勅命を下されたのじゃ。
【小説】未だ本能寺にあり(56) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(20)【羽柴秀吉譚】 儂(わし)は荒木の一件から頭を切り替えた。 ――何としても生き残る。 そのことだけを考えてゆこうとな。この間、上様は無能な家臣だと見定めれば、容赦なく切り捨てていかれていた。
【小説】未だ本能寺にあり(55) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(19)【羽柴秀吉譚】 さて、上様じゃ。あれは安土(あづち)の天主でのこと。儂(わし)が荒木の次第を報告に目通りを頼むと、登って来いと呼ばれたのじゃ。そこで、上様にもはきとお伝えした。
【小説】未だ本能寺にあり(54) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(18)【羽柴秀吉譚】 その半兵衛(はんべえ)が世を去ってから三月後、荒木が有岡城を捨てて遁(とん)走(そう)した。
【小説】未だ本能寺にあり(53) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(17)【羽柴秀吉譚】「お主はもう筑前を名乗るな。官兵衛の子を始末せよ」 上様は淡々と言い残すと、身を翻して足早に立ち去っていかれた。茫然(ぼうぜん)となった。
【小説】未だ本能寺にあり(52) 今村翔吾・作、木村浩之・画
二章 秀吉の焦り(16)【羽柴秀吉譚】 解(わか)ったか。明智と儂(わし)が如何(いか)に熾烈(しれつ)な出世争いをしていたか。荒木の謀叛(むほん)の理由は終(つい)ぞ解らぬままじゃ。
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