諫早湾干拓事業を巡る請求異議訴訟に関し、最高裁が漁業者側の上告を退ける決定をしたことを受け、臨時会見を開いた野村哲郎農相=東京・霞が関の農林水産省

 「訴訟だけはおやめいただきたい」―。諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門を開けるよう命じた確定判決の「無効」が確定した2日、野村哲郎農林水産相が臨時会見で本音を吐露した。「開門を求める訴訟が提起されないこと」を事実上の条件に、佐賀県など沿岸4県や漁業関係者と有明海再生の方策を考える「話し合いの場」を設ける考えを表明した。ただ、現在も係争中の裁判があり、「話し合い」の実現は見通せない状況にある。

 野村氏は会見冒頭、A4用紙2枚分の談話を読み上げた。「これからも開門、開門反対の立場が鋭く対立する状況が続き、さらなる訴訟の乱立をもたらす事態になった場合、地域の分断の解消が遠のくことが懸念される」と述べ、開門を求める訴訟の提起をけん制した。

 今回の農相談話では、「非開門で基金による和解を目指す」ことを表明した2017年農相談話の趣旨を踏まえることを明記した。

 その上で、有明海再生の具体的な方策を協議するため、国と沿岸4県、漁業、農業関係者と「話し合いの場」を設ける考えを明らかにした。「話し合いの場」の設置には、開門を求める漁業者らが「裁判ではなく、話し合いにより有明海再生を図っていく方向性に賛同」(野村農相)することを前提条件とした。

 農水省農地資源課によると、開門を求める漁業者に国の方針への賛同を求めるための具体的な方法は未定という。「開門無効」が確定した最高裁決定を後ろ盾に、国側の強気な姿勢がにじむ。

 話し合いによる解決をどのように進めるかを問われた野村氏は「訴訟だけはおやめいただきたい。せっかくのあれだけの宝の海が、持ち腐れになってしまう恐れがある。できるだけ話し合いの上で、国の支援でなんとか再生していただきたい」と語った。(山口貴由)