伊万里市南波多町にある椎ノ峰(しいのみね)窯跡群の保存整備に向けた調査がこのほど、現地で行われた。江戸時代に唐津藩が将軍家などに献上する焼き物を作ったとされ、一部の焼成室は今もほぼ完全な形で残っている。数年前から、貴重な文化財として守ろうという気運が地元住民や専門家の間で高まり、後世に引き継ぐための方法を探っている。
唐津藩領だった南波多町には、古唐津(主に江戸時代に肥前地域で焼かれた陶器の総称)の窯跡が9カ所残っている。椎ノ峰窯跡群はそのうち5カ所の窯跡があり、1630年代ごろから操業し、藩の注文も受けていたとされる。
椎ノ峰窯跡群は古陶磁に詳しい人の間では有名だが、その価値は一般の人にまで広く知られていなかった。2021年、地元の住民が窯跡を文化財として守り、後世に伝えようと「保存整備を考える会」を設立。この動きに東京芸術大と東京学芸大を中心とした調査グループが連動し、2月上旬の5日間、初めて本格的な学術調査を実施した。
今回は窯跡群の中の古椎新(こしいしん)窯跡を中心に調べた。同じ場所に新旧二つの登り窯があり、新しい方の一部は焼成室の天井部まで残っている。江戸時代の窯の構造に類似して貴重であり、写真を使った計測技術で立体的に再現したものを記録に収めた。
窯跡に関する資料が少ないため、地元に伝わる話の聞き取りも行った。今後さらに調査を進め、保存や活用について探っていく。保存整備を考える会の石原昭彦会長(66)は「大学の先生たちの力がないと保存は難しい。地元としては行政とも連携しながら、保存に向けて努力していきたい」と話す。(青木宏文)