研究成果を発表する佐賀大医学部の木村晋也教授(中央)ら=佐賀市の佐賀大本庄キャンパス

 佐賀大医学部の木村晋也教授らの研究グループは、がん治療薬として開発中の化合物について、九州・沖縄に患者が多い血液のがん成人T細胞白血病(ATL)などの治療薬と安全に併用でき、治療効果がより高まるとする研究成果をまとめた。飲み薬として患者の負担が小さい点も特長に挙げ「抗がん剤ではない飲み薬の組み合わせなので、患者の体に優しい」としており、実用化に向けて臨床試験を進めている。

 木村教授らによると、遺伝子に「メチル基」という分子がたまる「メチル化」が加齢に伴って進むと、がん抑制の働きが妨げられ、がんの発症や進行につながる。研究グループが大原薬品工業、国立がん研究センター研究所と共同で研究開発している化合物は、遺伝子に付いたメチル基を取り除く作用がある。

 今回は、ATLと難治性の急性骨髄性白血病(AML)に関し、マウスで実験した。それぞれ経口の既存薬と化合物を併用したところ、がんの抑制や生存率向上に効果があり、副作用も少なく抑えられたとした。AMLの場合は、脱メチル化薬が既存の注射剤から経口薬に置き換わり、通院の負担も軽減されるという。

 ATL、AMLに関する論文はそれぞれ、米国血液学会誌「Blood Advances」と米国癌(がん)学会誌「Cancer Research Communications」のオンライン版に掲載された。

 化合物の臨床試験は、安全性などを確認する目的で2022年夏から進めており、3年後の薬事承認を目指す。併用に関する臨床試験も準備を進めている。

 研究成果について木村教授は「世界で標準的な治療方法になる可能性がある」と説明する。メチル化について「白血病だけでなくあらゆるがんで起こる。化合物がどのがんに効果があるか一つ一つ調べている」と話し、研究の広がりに期待する。(円田浩二)