佐賀市の坂井英隆市長は27日、臨時会見を開き、佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画の受け入れを表明した。これに先だって井野俊郎防衛副大臣と市役所で会談し、環境保全や安全対策など8項目について防衛省と合意した。2018年8月に計画受け入れを判断した佐賀県に続き、空港立地自治体の市が容認したことで、今後の焦点は用地取得に移る。
坂井市長は会見で「苦渋の思いだが、受け入れはやむを得ない」と述べた。井野氏との非公開の会談で、相談・協議体制の構築や安全対策など8項目の確認事項を投げかけた。防衛省から「重く受け止め、責任を持って対応する」との回答を得たことを理由に計画を容認した。

合意事項では、騒音や排水、交通、治安など生活環境の保全や補償について話し合う協議会の設置を決めた。防衛省や市に加え、農漁業の関係者らで構成する。安全対策では、事故が発生した場合や重要情報に関し、円滑な情報共有のための連絡体制を構築する。米軍の佐賀空港使用については、常駐計画がないことを確認した上で、全国の他空港と横並びの中で使用する場合には「(防衛省は)市の理解が得られるよう、地元の懸念をしっかり受け止め、十分に説明する」とした。
合意事項には盛り込まれなかったが、坂井市長は、駐屯地設置による生活環境への影響軽減などを目的に公共施設整備などに防衛省の交付金を充当できる「特定防衛施設関連市町村」の指定を求めた。井野氏は「指定を含め、どのような対応が可能か検討していく」と前向きな姿勢を示した。
坂井市長は合意事項の8項目を「市において譲ることのできない重要なもの」と強調。立地自治体の長として「住民の生活を守り、安全安心のまちをつくる」「国防の重要性」の二つの視点で検討を重ねたことを説明し、計画容認について市民に理解を求めた。
井野氏は記者団に「市に理解いただいたことは大きな進展だ。市民の不安や懸念に配慮しつつ、駐屯地開設が地域の発展につながっていくよう市と協力して対応したい」と述べた。
県と地元漁協が空港建設時に結んだ自衛隊との空港共用を否定した協定が昨年11月に見直されたことを受け、防衛省は12月から今年2月にかけて住民向けの説明会を計5回開いた。
市は、説明会で出た疑問点を踏まえ、3回にわたり防衛省に文書で照会。得られた回答をまとめた「論点整理」の骨子案を市議会特別委員会で示しており、坂井市長の判断が焦点となっていた。(栗林賢)