大型の水がめを制作する(左から)奥川俊右ェ門さん、宮﨑雄太さん、副島健太郎さん=西松浦郡有田町の奥川俊右ェ門窯

 有田焼の大物ろくろ師の奥川俊右ェ門さん(73)=西松浦郡有田町=と、奥川さんに指導を受けてきた陶芸家6人が、地元の陶山神社にある水がめの再現に挑んでいる。高さ、口径各約1メートルの大作で「これだけの大きさを手がけるのは私も初めて」と奥川さん。大物作りは、作り手の減少に伴う技術の衰退が懸念され「若い世代と一緒に作ることで技術を伝えたい」と話す。

 奥川さんは、大物ろくろの名人として名高い初代奥川忠右衛門(故人)に師事し、2002年に「現代の名工」に選ばれた。後進の育成にも取り組み、有田窯業大学校などでろくろの講師を務めてきた。

 県窯業技術センターが17年から始めた「高度ろくろ研修」では、次世代を担う陶芸家に大物成形の技術を教えた。1期8カ月の実習に延べ40人ほどが参加。一定の目的を果たしたとして本年度で終了することになり、集大成で水がめの共同制作に挑んだ。

 陶山神社の水がめは1889(明治22)年に奉納され、当時の名工たちが手がけたとされる。大物作りが盛んだった頃の高い技術が用いられ、残っている資料も乏しいため、手探りでの再現になった。

 奥川さんと30~50代の研修生6人は、昨年11月から制作に着手した。上中下3段に分けて下から成形し、積み上げるようにつなぎ合わせた。土の総重量は100キロを超えるため電動ろくろは動かず、3人がかりで手で回している間に奥川さんが形を整えた。

 研修生の副島健太郎さん(45)は「先生の技に間近で触れる貴重な体験で、ちょっとした動作や言葉も全て勉強になる」と話す。奥川さんは「大物作りは難しくて大変だが、伝統の技術を絶やしてはいけない。学んだ技術を磨いて、その次の世代につないでほしい」と託した。

 作品は3月中旬までに完成する予定で、同町の佐賀大有田キャンパスでお披露目する。制作の様子を撮影した動画を配信サイト「ユーチューブ」で公開している。(青木宏文)