皆さんは「きゃあつぐろ」という言葉をご存知だろうか。「きゃあつぐろ」とは、九州の方言でカイツブリという水鳥の名前のことのようで、今はあまり見掛けなくなった鳥。頭の周辺が赤くて、動きが早いのが特徴。その鳥を題材にした「きゃあつぐろ」という“わらべ歌”が嬉野市塩田町一帯で歌い継がれているそうだ。
歌詞はこんな感じで歌われる。『きゃあつぐろ~、きゃあつぐろ~、きゃあつぐろの頭に火がちいた。すんだこんな きゅうだい』、訳すと「カイツブリの頭に火がついた。ぶるっと身体を振るわせて、潜ったら、すぐ消えてしまった」という内容だ。
来週から、佐賀と歴史的な交流を持つオランダとをつなぐプロジェクト「Land Memory and Folk Song~土地の記憶とうた~」(佐賀県主催)が始まる。その第1弾として嬉野市塩田町で生まれた民謡「きゃあつぐろ」がテーマとして選ばれた。オランダで活動する作曲家ジャスミン・カリモヴァと映像作家ラヴィニア・サウザの二人が嬉野に一定期間滞在し、佐賀県ゆかりのアーティストやワークショップに参加する方々と共に、民謡「きゃあつぐろ」を音楽と映像で新たな形で再構築。そして、後世へ繋げる。大村屋もアーティストの滞在や創作場の提供で協力する。
現在、音楽というと商業的な側面が強くなり、専門家が作るものになっているが、音楽の始まりは民謡だ。その土地のこと、生活のことを住民が歌にのせて次世代に伝える役割があった。今回のプロジェクトで、忘れ去られつつある民謡がどんな形で生まれ変わり次世代に残っていくのか、とても楽しみだ。
3月5日には塩田町にある本應寺で、どなたでも参加可能なワークショップも開かれる。このワークショップは「きゃあつぐろ」を実際に鑑賞したあと、アーティストと共に外へ出掛けて土地の音を採集。採集した音を自分の声で鳴らし、実際の演奏とともにレコーディングし楽曲を完成させる。
刺激的で濃密な時間になりそうだ。ご興味ある方は応募フォームから申し込みができるので、ぜひご参加を。