旅館はお客様の滞在のために24時間動いている

 現在、旅館の予約経路はインターネットからが主流となっている。令和3年に観光庁が出したデータではネット経由予約が49%、電話予約20%、旅行会社31%となっている。現在では、さらにネット経由が伸びているだろう。大村屋は現在、売上の80%がネット経由だ。

 予約サイトの中でゲストが参考にしているのがクチコミのページ。宿泊したゲストが匿名で滞在した感想を投稿している。全国の旅館ホテルは常にクチコミを気にしながら運営し、設備やサービスの底上げの一端を担っている。しかし、言われもない悪口やその場で指摘してもらえば解決するものをその場では言わず、チェックアウト後に宿側のミスを書く方もいる。

 人類総評論家の時代だ。私が嬉野に帰ってきた14年前は、悪いクチコミが入ると予約の入り方が明らかに鈍くなり、ネット経由のお客様にビクビクしながら運営していたものだ。

 しかし、SNSと呼ばれるTwitterやFacebook、そしてインスタグラムが広がって以降、自分のフォロワーや趣味が近い知り合いの投稿や、ハッシュタグ検索でリアルに体験した人の写真などを参考にする人が増えている。誰だか分からない匿名のクチコミではなく、自分と価値観や趣向が似ている人の意見を参考にしているということだろう。

 大村屋の自社アンケートでもSNSを見て予約したという方が約30%ほどになっている。実際に予約サイトで低い点数を付けられても、以前ほど予約が減少することはなくなった。それでも我々は常に世の中の目に晒(さら)されて、宿を運営していることに変わりはない。

 サービス産業の中でも宿泊業は、ゲストの滞在時間が長い。チェックインが15時でチェックアウトが翌朝10時だとすると、19時間の滞在時間だ。時間が長い分、評価されるポイントも多い。チェックアウト後も清掃や次の準備で、実際に宿は24時間営業。ゲストのクチコミで精神的にも疲弊することもあるが、我々はゲストの笑顔や「ありがとう」「また来ますね!」の一言を直接いただける幸せな職業だ。今日もわざわざ嬉野まで足を運んでくださることに感謝し、ゲストをお迎えしたい。