江戸初期の佐賀藩主の交代を背景とする「鍋島猫騒動」の検証をテーマにした講演会が11日、佐賀市の佐賀城本丸歴史館で開かれた。九州大名誉教授の高野信治さんが、「鍋島猫騒動 御家(おいえ)交代の物語化と怪異性」と題し、史料などに基づいた見解を紹介した。
高野さんは、仙台藩や加賀藩で起こった御家騒動を挙げて「歌舞伎や映画の演目になるような正義派、陰謀派という役割装置がある」と指摘。一方、鍋島家の御家騒動は同情や憐憫(れんびん)の心情が潜んでいることを解説し、 「敗者の恨みが怪異性を伴って『鍋島猫騒動』になっている」と強調した。
騒動の中で老猫が女性を食い、その女性に化けるなど、女性と化け猫の結び付きにも言及。1600~1700年代の史料をひもといて「ひがみ疑う心が猫と女性は似ているから、化け猫となる」「猫を女性がかわいがるのは、互いのひがみ心が求め合うから」などの記述を示しつつ、「好ましくない性質を女性と猫が共有する、一種のジェンダー感覚が背景にあったとみられる」と分析した。
講演会は、龍造寺家から鍋島家への領主交代や鍋島猫騒動についての虚実を伝える「佐賀県郷土コレクション企画展」に合わせて行われた。企画展は3月12日まで、佐賀城本丸歴史館と県立図書館(同市城内)の1階ロビーで開かれている。(福本真理)