小城市の観光や交通網、これからの発展に向けての構想などを語る江里口秀次市長=小城市の小城蒸溜所

小城市の観光や交通網、これからの発展に向けての構想などを語る江里口秀次市長=小城市の小城蒸溜所

 佐賀県の中央に位置し、旧小城郡4町の「平成の大合併」で2005年3月に誕生した小城市。地域の特色を生かしたまちづくりを進める一方、頻発する豪雨被害への備えなど課題も横たわる。市が誕生して以降かじを取る江里口秀次市長(70)に展望や課題を聞いた。(聞き手・桑原昇編集局長、構成・市原康史)

 -小城、三日月、牛津、芦刈の旧4町の合併以降、5期にわたってまちづくりを進めてきた。

 旧4町にはそれぞれ特色・個性があり、それを守りながら新しいまちとしてリニューアルしていくことを考えてきた。その気持ちは今も変わらない。まだ地域資源を生かし切れていない部分がある。まちづくりにどう取り込んでいくかが今後の課題だ。

 -豪雨対策を含め、具体策を聞きたい。

 小城町、三日月町のまちづくりの第1段階は出来上がりつつある。牛津、芦刈町の市南部2町については、まず「誰もが安心して暮らせるまちづくり」に主眼を置いている。一つは、大雨対策など防災面の強化。小城町三里地区で国の牛津川遊水地計画が進んでいるが、これが完成することで、南部の皆さんの安心につながる。忘れていけないのは集団移転に応じてくれた皆さんへの感謝だ。「下流域の被害が軽減されるのであれば協力する」と言っていただいている。本当にありがたい。移転地の確定などを早く進めたい。

 安心に暮らすためにはロードネットワークの充実も欠かせない。19年と21年の豪雨災害で国道34号が長期にわたって浸水し、長崎自動車道も土砂災害で通行止めになって混乱した。佐賀唐津道路が完成し、ダブルネットワークが早く出来上がるのを願う。さらに、多久佐賀間が開通すれば、有明沿岸道路と長崎道につながる。

 芦刈の農業振興を図っていくのはもちろん、海洋パークやオートキャンプ場などの観光資源をどう活用するか。芦刈、牛津の道路ネットワークが充実すれば、いろんな絵が描ける。佐賀空港も近く、久保田、川副など佐賀市南部を含め、九州北部の拠点になり得る。

 -JR牛津駅前の開発計画もある。

 駅南の開発や南北をつなぐ通路の要望もあるが、まずは牛津駅前をまちの顔として整備したい。図面は完成したが、駅に設置されるタイル張り壁画の保存を求める声が多く、視察に行った。あれは牛津の宝。残していけるように、当初の計画を変更したい。

 -今後のまちづくりをどのような手法で進めるか。

 牛津町につくるフットボールセンター、三日月町に新設する市学校給食センターなどハード部門の整備が続く。ただ、今後のまちづくりの原動力になるのは「市民協働」の力だと考える。互いに助け合える地域づくりを目指す生活支援体制整備事業は、市民の皆さんの自主的な活動に支えられている。例えば市内巡回バスでは、ボランティアの皆さんが高齢者の方々に付き添い、買い物にも同行してくれている。有償ボランティアではあるが、こうした協力がなければ取り組めない活動だ。

 地域猫活動にも多くの市民が関わってくれている。小城町の「江里山の棚田」では、中高校生らでつくる「江里山たなだ部」が棚田の維持・保全に汗を流している。一口ようかん「オギキューブ」のヒットなど、市民参加による商品開発プロジェクトも成果を上げている。

 小城市のいろんなところで「地域のチカラ」が生まれてきている。市長として言ってきたのは、「舞台づくりは行政がしても、演じるのは市民の皆さん」。合併から間もなく丸18年になるが、今まさに市民協働の力が花開いてきたと実感している。