カウンターに立つ居酒屋「さがん大地」の宮﨑茂輝店主(左)。新型コロナの感染症法上の位置付け引き下げによる利用者の意識変化を期待する=20日夜、佐賀市唐人

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、今春から季節性インフルエンザと同等の「5類」へ引き下げられる。3年続いた医療や社会活動に関する制限措置が緩和され、平時に戻る。「日常が戻ってくる」「これまで通りの対応を」。県民からは歓迎と同時に戸惑いの声が聞こえた。

■飲食店

 佐賀市の居酒屋「さがん大地」の宮﨑茂輝店主(49)は「これをきっかけに社会全体の意識が大きく変わるのでは」と期待を寄せる。団体客は多少戻ってきたが、客側の恐怖心をまだ感じている。「気軽に飲みに行ける雰囲気に戻れば」と願う。

 2020年の売り上げがコロナ以前の6割減だった同市の別の飲食店主は「補助金があったからなんとか乗り超えられたが、今はない。昨年や今年の方がきつい」。週末は多少の予約は入るが、平日は全く期待できない。「もっと早く対応してほしかった」と本音が漏れる。

■宿泊施設

 「やっと日常が戻ってくる」。感染拡大の波や外出自粛ムードに翻弄ほんろうされた嬉野温泉旅館組合の山口剛理事長(50)は安堵あんどの表情を浮かべる。

 全国旅行支援と西九州新幹線開業の影響で客足は急激に回復したが、現場は人手不足。「ただでさえ人が足りてないのに、濃厚接触者が出ると回らなくなる」とこぼし、濃厚接触者の待機期間がなくなることを期待する。一方で旅行者が“割引慣れ”して「支援終了後に定価に戻ったときに客足が鈍くなるのでは」と心配している。

■子育て世代

 未就学児3人を育てる伊万里市の30代女性は「いい面もあれば、不安な面もある」。子を預ける保育園は、クラス内で感染者が出ると濃厚接触者として自宅待機になってきた。インフルエンザと同様の対応になることで「自宅待機が減って職場に迷惑をかけることが少なくなるかも」とする一方、死者が増える中での方針転換が「気になる」とも話す。

 家族全員が昨冬に感染し、子どもは39度を超える熱が出た。ワクチン接種費用の自己負担を求めるかどうかは今後検討されるが、子どもは未接種で「自己負担になると、打たせるか悩んでしまう」と戸惑いを隠さない。

■高齢者

 重症化リスクが高い高齢者からは不安視する声が上がった。三養基郡みやき町の中山亘侑のぶゆきさん(85)は「国が決めることだから仕方がない」としながらも「感染者や死者数が減少しない限りは心配。これまで通りコロナはコロナとして扱ってほしい」と訴える。

 鳥栖市で買い物から帰宅途中の80代女性は「高血圧を持っているので、感染するのが怖い」と見直しで警戒感が薄れることを懸念する。発熱やせきなど症状がある人や、高齢者ら重症化リスクの高い人と接する場合を除き、屋内でのマスク着用を原則不要とする方針で「自分の身は自分で守るしかない」と身構える。

(宮﨑勝、志波知佳、小島発樹、松岡蒼大、井手一希)