沖縄出身の自衛隊員らによる「沖縄独立計画」。漫画家さいとう・たかをさんの人気漫画「ゴルゴ13」シリーズの中で、1995年に発表された「沖縄シンドローム」は、大胆な物語の中に、沖縄の人々の思いや社会・経済状況を巧みに反映し、大きな反響を呼んだ。重要な場面で首里城(しゅりじょう)を舞台にし、沖縄の歴史、文化を踏まえ、物語の臨場感を高めた。
同作の主要人物は、琉球王家に連なる一族の子孫で自衛隊の天才パイロット。日米両政府によって過重な基地負担に加え、経済的な成長も阻まれている沖縄の状況を脱するため、県出身の自衛官たちを率いて「沖縄独立計画」を画策する―。
シナリオを担当したのは、沖縄出身のシナリオ作家・平良(たいら)隆久さん(60)。同作が発表された95年は、米兵による少女乱暴事件が起きた。沖縄の過重な基地負担に県民から抗議の声が高まり、全国的な注目も集まった。そうした社会状況も作品に織り込んだ。
当初は想定していなかった中城城跡(なかぐすくじょうあと)の場面も、さいとうさんが追加するなど舞台設定にもこだわった。平良さんは「さいとう先生は沖縄の気持ちをくみ取ってくれたと思う。感情を入れて描いていた」と振り返る。
首里城や中城城は、沖縄の伝統芸能の組踊や沖縄芝居でも舞台になってきた。
琉球王国時代にも3度、失火や戦乱などで焼失した歴史がある首里城。45年の沖縄戦で破壊され、92年には正殿が復元された。2019年10月末、火災によって正殿など主要な建物が再び全焼した首里城。再建へ向けた準備を進めた上で、国は22年11月、正殿の起工式を開いた。26年度に正殿を完成させ、さらに南殿や北殿の工事も進めていく計画だ。(琉球新報・古堅一樹)
メモ 首里城跡や中城城跡は、2000年に世界遺産として登録された「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の中に含まれる。19年の火災で焼失後、再建が進む首里城では工事の過程も公開し「見せる復興」にも取り組む。