褐色に色落ちした冷凍網のノリ=佐賀市川副町の九州佐賀国際空港沖約4キロ

 有明海で養殖ノリの色落ち被害が深刻化している問題で、佐賀県は12日、赤潮の原因となる植物プランクトンを捕食する養殖カキを漁場に設置する緊急対策を発表した。プランクトンを減らすことで、窒素などの栄養塩をノリが吸収しやすい環境をつくり、色落ちの軽減につなげる。

 県は色落ち被害に関して知事トップの庁内対策会議を初めて設置し、対策を報告した。佐賀玄海漁業協同組合(唐津市)の協力で養殖カキ20トンを確保し、来週から順次、県有明海漁業協同組合を通して漁業者に配布、漁場に設置してもらう。県水産課によると、水面近くに網に入れたカキを設置することで、カキがプランクトンを補食し、ノリに栄養塩が行き渡るようにすることで、色落ちの軽減が期待できるという。

 カキによるプランクトンの補食の試みは、これまでも県有明海水産振興センターが試験的に実施しており、ノリの色付きが戻ったケースもあるという。水産課は「これほど大規模にやるのは全国的にも初めてではないか」と話す。事業費は2千万円で、予備費を流用する。

 会議では、昨年10月以降の降雨量が少なく、栄養塩の供給が少ない状況にケイソウプランクトンの赤潮発生が重なったことで、県内全域で色落ちが発生しているとの分析が示された。今月2日から張り込みが始まった冷凍網ノリに関しても、11日の調査で、全19地点中、ほぼ全域に当たる13地点で最も色落ちがひどい「レベル4」が確認されており、正常な地点がなかったことも共有された。

 会議に先立ち六角川河口の福富地区の漁場を視察した坂本洋介副知事は「色落ちがひどく、量も少なかったが、まだ対策を打つことができる」と報告した。山口祥義知事は「色落ち被害軽減と量の確保のために、できることは何でもやり、厳しい環境でも努力している漁業者を応援していく」と述べた。(大橋諒)