サッカー・J1サガン鳥栖は昨季、リーグ戦を11位で終えた。J1で初めて指揮を執った川井健太監督は、自らがピッチ上で考えてプレーすることを選手たちに植え付けた。テンポのある攻撃的なサッカーで開幕前は「降格候補」の声もあったチームをまとめ、残留争いに巻き込まれることなく1年を走りきった。常に変化を求め続けた知将は、昨年をどのように振り返り、今季はどんな青写真を描いているのか。話を聞いた。(聞き手、構成・中村健人)

■昨季終了後、全試合見直すと言っていた。
何度かに分けて見直した。34試合を一気に見るのは僕の目が持たないので(笑)。気づいた点もあるし、当時の僕の感情も思い出すことができる。
■気づいた点とは。
10節までは自分たちのやりたいことを前面に出せていたが、それ以降は相手も対策を立ててきた。コロナの影響もあったけれど、相手の対応に合わせてチームの変化は感じられた。
■今季はさらに研究される。どう対応するか。
研究されるのは光栄なこと。チャンピオンを目指すチームには必ず現れる壁。形を変えることも一つあるが、基本的には大枠を変えるつもりはない。細かい質などの枝葉の部分を付け加える形をとりたい。
■サイドを強みとしながら、中央突破からの得点が課題の一つ。必要なのは個人のレベルアップか組織的に崩すことか。
両方とも必要になる。中央をうまく使うために、個人の質の高さは求めていく。一方、誰が出ても崩せる仕組みを構築したいのでそこは両輪。昨季からの選手も今季入ってくる選手も、両方を求めても頭がパンクしないような選手たちなので、個人のレベルアップと連係の構築の必要性は植え付けていきたい。
■タイトルを取るために必要なことは。
本当に難しい。クラブとしてJ2も含めてタイトルを取ったことがなく、そこを目指すのは並大抵のことではない。足元をしっかり見つめ、他人の歩幅に合わせることなく進む必要がある。足りないことが多くあると認識しているが、選手たちには自分たちの力で勝ち取る権利があることは忘れないでほしい。
■サポーターにメッセージを。
昨季は応援いただきありがとうございました。最終戦がなぜベストゲームだったかというと、サポーターに背中を押してもらえると力を出せると実感したから。今季もともに歩んでほしいし、結果的にも内容的にも、みなさんがスタジアムから笑って帰られる試合をしたい。その積み重ねが結果につながると思う。