有田、伊万里焼の窯元で、絵付けの筆を巡って困ったことが起きている。半世紀にわたり多くの窯元に納品してきた業者が高齢化と後継者不在で事実上廃業し、慣れ親しんできた特注の筆が手に入らなくなった。絵付け師の高度な技を支える筆も職人の手仕事で作られており、代替品を見つけるのも容易ではない。関係者は焼き物の制作に影響が出ないよう、新たな仕入れ先の開拓を進めている。

 業者は、筆の名産地として知られる広島県熊野町にある妙勝会(みょうしょうかい)。職人の山中禎祐(ていすけ)さん(86)が陶芸用の筆を専門に手がけ、肥前窯業圏の有田や伊万里、波佐見、三川内の窯元に多くの顧客を持っている。