唐津市厳木町の山あいに広がる釣り場「フィッシングパーク平之」。釣り好きで2年前から運営を手伝ってきた米丸知成(ともしげ)さん(51)は今年4月、厳木町に移住した。九州一の釣り場としてにぎわいを取り戻そうと、釣り場の規模拡大を視野に奔走している。
福岡県で小学校教員だった米丸さんは2019年冬に初めて釣り場を訪れた。作礼山の麓の山水で育ったニジマスのスポーツフィッシングを楽しめる。管理を担ってきた地元住民からマナーの悪い釣り客に手を焼いているとの話を聞き、「なんとかしたい」とボランティアで運営を手伝い始めた。
防犯カメラの設置やルールの周知、ホームページの作成を手がけ、客足の増加にもつながってきた。「魚がきれいで、すごい引きもあって。ほかの釣り場とは違った楽しさがあった」と釣り場への愛着を語る。
平之地区は35世帯が住み、高齢化率は68%に上る。釣り場を運営する後継者にも頭を悩ませていた。米丸さんは3月末に教員を早期退職し、「人生一度きり。地域が生き残っていくためには外から関わる人を増やしていくしかない」と移住を決断した。平之地区の盛り上げに向け、釣り場の運営も引き継いでいくという。
朝は鳥のさえずりで目覚め、川のせせらぎも耳に届く。厳木町の魅力は、「人の温かさと自然の豊かさが大きかった。酒を酌み交わし、よくしてくれたから、すんなり地域に入っていけた」と米丸さん。作礼山などの豊かな自然に囲まれ、ゆったりと流れる時間を満喫している。
SNSではニジマスの調理法や釣り場の魅力なども発信し、九州を中心に釣り人が訪れ、じわりと人気を呼んでいる。「毎日わくわくしている。新しい人のコミュニティーをつくって地域を持続させたい」と話し、「釣りを楽しめるみんなの遊び場にしたい。地域への恩返しのためにも精いっぱい頑張りたい」と力を込める。(横田千晶)