ダリガンガ村医療センターのスタッフと(筆者は前列左から4人目)。国境を超えた人と人とのつながりが、太い絆になっている

 モンゴルで2018年から始まった肝炎・肝がん対策は、「佐賀方式」が基礎になっている。ウイルス性肝炎に関する「啓発」、簡単な血液検査による「受検」、陽性なら精密検査を行う「受診」、最適な治療につなげる「受療」、そして治療後の「フォローアップ」。このサイクルを、多職種協働による最高のバトンタッチで効率よく、速やかに進めるのが佐賀方式だ。

 モンゴルの全21県のうち3県で導入され、好ましい結果も得られてきた。今後、全土に展開されることを期待している。

 首都ウランバートルと佐賀のロータリークラブによる、国境を超えた人と人とのつながりがきっかけだった。「肝がん死亡率ワーストの返上」という共通の目標のために、「何か役に立ちたい」という思いが連鎖した。医療支援を続けてきた香月武先生(佐賀大名誉教授)から肝疾患センターに勤務していた私につながり、大学も意義を理解してくれた。センターの仲間も共感し、一人一人の糸が紡がれて、佐賀とモンゴルをつなぐ太い絆になった。

 ロータリークラブの会員をはじめ、多くの医療者、住民の協力でプロジェクトは進んでいる。その根底にある「利他の心」は、国籍を問わない。新型コロナウイルスのパンデミックをはじめ、予想もしなかった「一大事」を乗り越えるには、常に利他の心を持って、明るく前向きに、あるべき姿を一生懸命に目指していくことが不可欠だ。そのことを、プロジェクトを通して学んでいる。

 10月1日には、すでに氷点下となったモンゴルへ冬の重装備で再渡航し、スフバートル県でも最もへき地にある村で活動した。プロジェクトは今後、次の県へ続いていくことになろう。

 これからも続く新たな出会いには「センベノー!(こんにちは)」、そしてお世話になったら「バヤルララー!(ありがとう)」と言おう、必ず笑顔を添えて。(前佐賀大肝疾患センター長・医療法人ロコメディカル副理事長)

        =おわり