Q 書店で立ち読みをしていて、買うほどではないけど、特定の部分だけ情報を残しておきたいと思うことがあります。スマートフォンのカメラで撮影しても問題ないでしょうか。
A まず、本を著作権者に無断で撮影する行為は、原則として著作権法上「複製権」侵害となります。もっとも、その撮影が「私的使用のため」といえる場合には、例外的に複製することが認められているため、撮影した画像をSNS上にアップするなどしなければ、基本的には著作権法上の問題は生じません。
次に、巷では本件行為を「デジタル万引き」と言うようで、一見すると刑法上の窃盗罪に当たるようにも思われますが、一般的に窃盗罪の対象は有体物に限定されており、データはその対象外となるため窃盗罪は成立しないというのが実務上の取扱いです。
もっとも、本を買うつもりもなく書店に入る行為が建造物侵入罪に当たる可能性があります。典型的なのは万引目的で入るような場合ですが、書店の入り口に「無断撮影禁止」などの張り紙がなされていると、当該目的で入店した者につき管理者の立入拒否の意思が明確にされている以上、建造物侵入罪が成立する可能性があります。
また、店内での立ち読みがあくまでも販売促進のために許されていることを考慮すると、本を撮影する行為は、その本を購入する意思がないことの明確な表れといえる以上、書店側の許容の範囲外の行動ということになります。そのため、場合によっては、書店の権利を侵害したとして損害賠償責任を問われる可能性があります。
本は書店の財物であること意識して、節度ある行動を心がけましょう。
(佐賀市 弁護士 服部友祐)