4回目のワクチンを受けた方がよいですか

-現代の医師・患者関係-   

 

 私が卒後研修を受けていた1980年代における医師・患者関係は、「おまかせ医療」であったような気がします。日本社会の場合、一般に人々は欧米社会の多くの国々にみられるように、個人としていかに「独立」して自由に生きるかという関心よりも、生活の場の中の人との「相互依存」の中で、「どのようにうまく付き合っていけるか」ということに関心がありました。十分な人間関係ができるまで自己主張を抑え、情緒的に打ち解け、親しくなることを何よりも重んじてきました。患者さんや家族のほうも、詳しく説明を受けてもよくわからないので、おまかせできる、信頼し得る医師か否かを判断することに熱心でした。

 しかし、徐々にこのような医師・患者関係は崩れていきました。さまざまな医療上のミスが取り上げられ、西洋流のインフォームド・コンセントの重要性が問われるようになったのです。患者さんが自らより良い治療法を選択するには、自己決定できるための治療法の効果や副作用や費用などを理解するための医療情報を十分収集し、その治療の必要性を理解したうえで、患者自身が選択すると同時に、「自己責任」を負う形になります。現代では、医師・患者関係を信頼できる関係につくりあげる最大の困難は、医師と患者さんがそれぞれ独自の考え方、感じ方、個性をもった人間であり、独自の主張を表現できる関係だということです。

 残念ながら、新型コロナワクチンに関しては、現在のところ、十分なエビデンスがありません。したがって、4回目のワクチンを受けるかどうかは、個人の判断になります。十分納得した上で、受けられた方がよいと思います。ただ、受けない人を非難したり、差別したりすることがないようにお願いしたいと思います。日本人の習性として、みんなと同じようにしなかったり、目立ったりすると、出る杭は打たれます。慢性疾患をもっておられる方やご高齢の方は受けられた方がよいでしょうという程度のことしか、言えないような気がします。

 (九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授 佐藤武)