6月としては異例の猛暑や冷房需要の増加による電力供給の逼迫(ひっぱく)などが大きなニュースとなる中での参院選だ。ロシアのウクライナ侵攻後、ただでさえ上昇傾向にあった原油や天然ガスの価格はさらに高騰し、電力やガソリン料金の値上げにつながった。

 一方、世界各地で熱波や干ばつ、大規模な豪雨災害などが多発、化石燃料利用を可能な限り減らし、強力な気候変動対策を進めることも急務だ。

 多くの難題の同時解決が必要なエネルギー政策は国の将来を左右する重要な課題だ。にもかかわらず、選挙の主要な争点となっていないのは大きな問題である。

 エネルギーや電気の使い方に多くの注目が集まっている今こそ、各党は原子力発電の扱いを含めたエネルギー政策について積極的に論争し、有権者の信を問うべきだ。

 日本のエネルギー政策と他の先進国とのギャップは非常に大きい。先進国のほとんどが気候変動対策として石炭火力の廃絶を決め、再生可能エネルギーの急速な導入を進めている。発電事業者と送配電網を所有する企業とを完全に分離する発送電分離も多くの国で実現済みだ。

 再生可能エネルギーの価格は急速に下がり、多くの国で最も安い電源となった。一方で、原発の建設コストは高騰し、多くの国で競争力を失っている。ウクライナ危機をきっかけに欧州諸国は短期的な化石燃料の調達や利用に取り組む一方、再生可能エネルギーの一層の拡大を通じて海外の化石燃料への依存から脱却する政策を打ち出した。

 だが、日本では気候変動の原因となる火力発電、それも石炭火力への依存が続き、再生可能エネルギーの普及は遅れている。資源小国と言われる日本には、豊かな再生可能エネルギー資源がある。温室効果ガス排出を抑え、資源の海外依存を解消するためには再生可能エネルギーの一層の拡大が不可欠である。

 日本でも2011年の東京電力福島第1原発事故後、電力市場の自由化が進んだが、欧州並みの発送電分離は実現していない。

 電力会社から独立した業者によって、透明性が高く、公平な送配電網へのアクセスが保証されていれば、再生可能エネルギーへの投資はもっと進むし、広域の融通も容易になり、需給に余裕も生まれる。

 日本の課題は多く、難問が山積している。ガソリン高騰対策としての補助金や海外の化石燃料の調達、既存の原発の早期稼働といった目先の対策では解決できないものばかりだ。

 国政選挙の場では、温室効果ガス排出の早急かつ大幅な削減を実現する一方で、エネルギーの海外依存を減らし、いかに安定供給を実現するかという長期的な視点に立った政策論争が欠かせない。

 太陽光などの価格が急降下する中、高コストで事故のリスクも高い原発の利用を拡大することに合理的理由があるのか。短期間で一層の再生可能エネルギーの導入や省エネを実現するため、具体的にどのような政策や規制を導入するのか。世界の流れに抗して石炭火力依存を続けることのリスクをどう考えるのか。

 各党には論争の中で、政策の根拠と将来へのビジョンを明確に示すことが求められている。それが、未来の社会に対する政治家の責任だ。(共同通信・井田徹治)