かなり刺激的な提言である。脚本家の倉本聰さんが「老人よ、電気を消して『貧幸』に戻ろう!」(文藝春秋6月号)と呼びかけた。地球環境の危機を前にして、しびれを切らしたように、貧しい時代を経験した高齢者に行動を促している◆貧幸とは「貧しいけれど幸せ」。現役世代はきょうの経済、あすの景気ばかりを考え、一向に眠りから覚めない。ならば壮年は放っておき、地球環境の改善を老後の、最後の仕事にしようと、87歳の倉本さんは賛同者を募る◆少し歩けばテレビのボタンは押せるのに、歩くエネルギーを節約しようとリモコンを発明した。そうしたサボりを「便利」と呼び、代替エネルギーを使ってきたと指摘する。中には現実的には難しいと感じる内容もあるが、承知の上での提言だろう◆早くも梅雨明け、猛暑日のニュースが届く。冷房利用の増加などが見込まれ、東京電力管内では全国初の「電力需給逼迫(ひっぱく)注意報」が出された。テレビは「スタジオの照明を少し落として放送しています」とお断りのコメント。夏本番はこれからで、熱中症に気をつけながらの節電生活になりそうだ◆倉本さんは右往左往する社会をしかめっ面で見ているかもしれない。持て余すほどの「便利」を根本から見つめ直せ、と。貧幸の時代に戻れるかは分からないが、重い問いかけである。(知)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。