「ぼく」(C)谷川俊太郎・合田里美/岩崎書店

 読んだ後、言葉が出てこなかった。簡単にはまとめられない感情が体中を駆け巡り、自死を選択した「ぼく」の気持ちを考えたら涙が止まらなかった。「ぼくは しんだ じぶんで しんだ ひとりで しんだ」。この言葉が頭の中で熱を持ち、いつまでも離れなかった。

 詩人・谷川俊太郎さんが「自死」と向き合ったという絵本。表紙に描かれている小学生の「ぼく」は自ら、独りで死ぬことを選ぶ。重くのしかかるテーマだが、作中で描かれる世界は死を感じさせないほど、とても美しい。桜舞う通学路、母と飼い犬を連れて歩いたであろう散歩道、カモメが悠々と飛ぶ海…。かつて彼が過ごした街並みの中で、死後の「ぼく」が言葉を紡ぐ。友達のこと、おにぎりの味、お金持ちになる夢…、きっと「ぼく」はこれからも生きたかった。周りの人たちも彼に生きていてほしかった。どうすれば、生きる道を選んでくれただろう。読んで、考えてみてほしい。

 最後に、「ぼく」と同じような思いを抱えている人へ。その思いを、少しずつでいいから誰かに伝えてみてほしい。支えてくれる人や一緒に考えてくれる人がいるかもしれない。気持ちが楽になるかもしれない。だからどうか、死なないで。(岩崎書店/1870円)

(コンテンツ部・池田知恵)