「力を入れなくていいからね」。野本尚子=佐賀商高教諭=は佐賀県でフェンシングの指導を始めたころ、県職員に言われた言葉を今も忘れない。「勝たなくていいと言われたら勝ちたくなる」。競技への情熱が、縁もゆかりもなかった佐賀のフェンシング界を支えている。

高校生らに指導する野本尚子さん。2007年の佐賀総体では「ゼロからのスタート」から3年で、チームを全国ベスト8に引き上げた=佐賀市のSAGAサンライズパーク・フェンシング場
野本は熊本県宮原町(旧氷川町)出身。フェンシングの強豪校・氷川高(現八代清流高)に進学し、高校1年から競技を始めた。中学まではバスケットボールに打ち込んでいたが、「全国の舞台で活躍したい」との思いからだった。3年時には全国総体で団体優勝、個人3位と輝かしい成績を残した。