「若手の承認欲求を満たすことが大切です」。人材育成の解説書にそう書いてある。若い人に限らず、誰だって認められたい。「デクノボーと呼ばれたい」などと、宮沢賢治の境地にはたどりつけない。やはり、たまには褒められたいと思う俗人である◆だからといって、こんな賞状は欲しくない。悪ふざけの域をはるかに超えており、大人の振る舞いとは信じ難い。青森県八戸市の住宅会社が自殺した40代の社員に渡していた賞状。先日の社会面に載った記事を読んでの不快さが澱(おり)のように残っている◆賞状は課長が作成し、新年会の場で渡されたという。賞状は「症状」となっており、「貴方は、今まで大した成績を残さず、あーあって感じ」「現在でも変わらず事務的営業を貫き」「陰で努力し、あまり頑張ってない様に見えてやはり頑張ってない」-。この社員は翌月、重度のうつ病になって自殺した◆褒め言葉には限りがあるが、けなす言葉には際限がない。そんな話を聞いた覚えがある。課長は「症状」を作りながら「これは受けるぞ、笑えるぞ」などと思っていたのだろうか◆標的をつくって攻撃するいじめの構図。なくせないのは人間の愚かさだが、抑える意識を持てるのも人間だろう。けなすことが厳しい指導ではない。想像力を働かせ、限りのない褒め言葉を身につけたい。(知)

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