第2次世界大戦で破壊された古伊万里を戦争遺産として保管し続けているオーストリアのロースドルフ城主ガブリエル・ピアッティ氏(35)が21日、佐賀県の山口祥義知事を表敬訪問した。
県立九州陶磁文化館(西松浦郡有田町)で開催中の特別企画展「海を渡った古伊万里~ウィーン、ロースドルフ城の悲劇」のために来日した。ピアッティ氏はロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「私たちが大切にしてきた陶片は、平和と友情の象徴であり、戦争は何ももたらさないと示している」と語った。
ロースドルフ城は大戦末期の1945年、ソ連軍に接収され、古伊万里などの陶磁器コレクションが破壊された。ピアッティ氏の曽祖父が1万点に及ぶ陶片を一つの部屋にまとめて「陶片の間」と名付けた。
山口知事が破壊当時の状況を尋ねると、ピアッティ氏は「兵士たちは落として割ったり、銃の標的にしたりと、あらゆる手段で破壊した」と表情を曇らせた。
ロースドルフ城を初めて日本に紹介した茶道家の保科眞智子さん(50)=東京=も同席し、ピアッティ氏は「有田で生まれ、遠くヨーロッパで愛された焼き物が破壊されて、時間が止まっていた。今回の展覧会により、もう一度時間が未来へ動き出した」と感謝していた。特別企画展「海を渡った古伊万里-」は7月18日まで。(古賀史生)