宮沢りえさん主演の映画「父と暮(くら)せば」は原爆投下後の広島が舞台。原爆投下の日、同じ場所にいて娘は生き残り、父は亡くなった。生と死を分けたものは何だったのか。自分は生きてよかったのか…◆同じような思いを持つ人はいる。広島市出身のサーロー節子さんはその一人。あの日、広島駅近くで被爆しながら助かった。生き残った意味を考え、節子さんはやがて非核反戦運動に傾倒していく◆核兵器禁止条約の締約国会議がきのう、オーストリアのウィーンで始まった。2017年7月の条約採択から5年。批准国が50カ国に到達し、昨年1月に発効してから約1年半。今回が初めての会議だ。だが、核保有国は参加せず、日本もオブザーバー参加さえしない◆「核の傘」に守られているという現実と核廃絶の願いは矛盾するのだろうか。岸田首相は8月に開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席する意向だが、ロシアとウクライナの戦争で「核の危機」が深刻化する今、被爆国日本はもっと単純に「核兵器廃絶」の先頭に立っていいと思う。武力で平和は守れない◆「父と暮せば」は、亡くなった父の霊が娘の前に現れ、娘を力づけるという設定。全ての戦争犠牲者もきっと、核兵器廃絶を応援してくれるだろう。核兵器は必要悪ではなく絶対悪。締約国会議の議論に期待する。(義)

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