作家瀬尾まいこさんの小説『そして、バトンは渡された』の主人公の女性には2人の母と3人の父がいる。実母と継母、実父と2人の義父。主人公は血のつながらない親の間を“リレー”されるが、たくさんの愛情を受けて育つ◆「家族のかたち」はさまざま。血のつながりがなくても親子の絆はつくれる。主人公の3人目の父は一流企業に勤めながら家事を懸命にこなし、理想のお父さんに思える◆愛とは形そのものではなく、両者が互いに引き合い、引かれ合う目には見えないエネルギーのこと。もしかすると、その引き合う糸を半分ずつ出し合うので結ばれ合うのを「絆」と書くのかもしれない。こんな趣旨の文章が、元NHKアナウンサー鈴木健二さんの著書にあった。なるほど、人それぞれが持つ糸が触れ合えば縁、その糸を結べば「絆」になるのか。血縁も当然大切だが、家族は糸をしっかりつなぐことで生まれるのだと思う◆コロナ禍で企業の業績が落ち込み、職場での重圧に疲れ気味のお父さんは多いかもしれない。だが、つながる家族の糸に支えられることもあるだろう◆『そして、バトンは渡された』は、3人目の父が娘とつないだ糸の強さとバトンの意味を考えさせる。きょうは「父の日」。家族との糸がほどけていないか、忙しいを言い訳にせず確認してみたい。(義)

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