ヒカゲスゲ

 カヤツリグサ科スゲ属のヒカゲスゲとモエギスゲは、どちらもアリに種子を運んでもらう植物であり、佐賀県内の各地で同じようなところに生育している。両種の種子の本体はほぼ同じ大きさであるが、それを運ぶアリにとっての餌となるエライオソームという付属体の大きさは、ヒカゲスゲの方が2倍ほど大きい。ヒカゲスゲはなぜ、種子に大きな「お土産」を付けるのだろうか。

 種子を運ぶアリを比較した結果、モエギスゲの種子は小型で短い距離しか運ばないオオズアリやアメイロアリによって大半が運ばれたのに対し、ヒカゲスゲの種子はこれらに加えて大型のクロヤマアリによって比較的遠くにも多く運ばれた。

 両種の芽生えを同種の大きな株からの距離を違えて栽培したところ、モエギスゲは距離に関わらず同じように成長したものの、ヒカゲスゲは大きな株との距離が近いと成長が悪くなった。したがって、ヒカゲスゲはクロヤマアリに好まれるように大きなエライオソームを付け、親株から離れた場所に運ばれることにより種内競争を避けている可能性がある。

 また、両種は開花や結実の時期も異なっており、どちらもヒカゲスゲの方がやや早い。そして、早い時期の方が大型のクロヤマアリが活動する割合が高いことから、種子を付ける時期も遠くまで運ばれる確率に影響している可能性がある。

 四季の移ろいの中で何げないように見える花の時期や実の時期、そしてそれらの色や形にも、生き残る確率を少しでも高めるための生物の術すべが込められている。

(佐賀大農学部准教授)

=毎週日曜掲載