衆院選挙区画定審議会(区割り審)が、小選挙区定数の「10増10減」を柱にした新たな区割り案を岸田文雄首相に勧告した。

 25都道府県、140選挙区が対象になる過去最大の改定だ。目的とした「1票の格差」是正の意義と新区割りの周知を徹底し、有権者の積極的な投票権行使につなげたい。

 政府は勧告を受け、公選法改正案を秋にも想定される臨時国会に提出し、成立すれば、次期衆院選から適用される見込みだ。

 新区割り案では、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知の5都県で計10議席増え、宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県で各1議席減る。

 1票の格差是正を後押ししたのは司法だ。選挙区の有権者数が異なることで1票の価値に格差が生じるのは、法の下の平等を定めた憲法に違反するとして弁護士らが訴えた裁判で、最高裁は2009年と12年の衆院選に続き、最大格差が2・13倍の14年衆院選についても「違憲状態」と判断した。

 このため、自民党主導で16年に成立した衆院選挙制度改革関連法に従って、1票の格差が2倍以上にならないよう、20年国勢調査を基に、人口比を反映しやすい「アダムズ方式」で定数を算出し直すことにした。

 にもかかわらず自民党出身の細田博之衆院議長が「都会だけ(議員を)増やす、地方いじめのような10増10減」などと異論を唱えたのは、司法と立法府をないがしろにしたと言わざるを得ない。

 ただ、定数減となる10県が区割り審に提出した意見書でも、多くの懸念が表明されていた。都市部の議員ばかり増えると、「地方が抱える少子高齢化、過疎化といった課題の解決が遠のく」との危機感が背景にある。

 国会審議では、地方の声に応える方策について与野党で知恵を絞ってもらいたい。

 例えば、県議会の代表者から地方対策を巡り意見を聴取する場の新設が考えられる。選挙制度に関わるが、各ブロック比例代表名簿の上位に、定数が削減された県の候補を優先的に並べる案も検討に値するのではないか。

 新区割りによって1票の格差は2倍をわずかに下回っただけだが、憲法の理念に近づいたことは一定の評価をしたい。一方、アダムズ方式の適用を続けると、都市部偏重が一層進みかねない。

 民主主義の土台である選挙制度は安定運用が求められるものの、国会は、よりよい制度づくりの努力を怠ってはならない。

 区割り審は今回、一つの区市町村が複数の選挙区に分割されているケースの解消にも力を注いだため、見直し対象が膨らんだ。適切な措置であるが、意中の候補者がいなくなり戸惑う有権者がいるかもしれない。

 定数削減によって、政党が現職議員を小選挙区候補から外さなければならない県も出てくる。自民党でいえば、安倍晋三元首相の地元の山口県もその一つだが、候補者が変わって有権者が投票所に足を運ばないようになるのは望ましくない。

 与野党の候補者選定では、有権者を納得させる説明が求められよう。

 衆院選の投票率は50%台で低迷している。1票の格差が縮小しても、投票率が下落しては民主主義は形骸化しかねない。政府、与野党は投票率向上の取り組みを強めたい。(共同通信・鈴木博之)