作品との距離で見え方が変わることを体感するテーマ展「ミクロスコープ・テレスコープ」が佐賀市の佐賀県立博物館で開かれている。画家・池田学さんの「誕生」や唐津神社の絵図などから、近寄ることで気づく小さな物語を楽しめる。幕末までだった常設展も明治時代までに拡充している。テーマ展は19日まで。
高さ3メートル、横4メートルの「誕生」は巨木が花を咲かせ、根元には波とともに大量のがれきが押し寄せる。近づくと、左下に「3・11」の数字。左上には幹にはうように神経や骨、血管を表すような描写もある。右手を傷めた際、左手で制作した部分という。
冨野淇園(きえん)の「唐津神祭行列図」は7幅にわたる大作で、西の浜へ15台の曳山(やま)と2基のみこしが集まる。現在の唐津くんちの曳山は14台。絵の中にある紺屋町の「黒獅子」は明治時代に姿を消し、今は見ることができない。材木町の曳山は、亀の背に浦島太郎ではなく宝珠が乗っている。曳(ひ)き子や見物客ら1600人や、くんちの情景がつぶさに描かれている。
学芸員の安東慶子さんは「遠近で異なる印象を楽しんでもらいたい」と話す。
常設展では新たに約60点の資料を紹介している。吉野ケ里遺跡から出土した国指定重要文化財の「細形銅剣」(文化庁蔵)といった弥生時代の青銅器や、幕末維新期に活躍した県出身の江藤新平が息子の日頃の様子をしたため、手続きを依頼する書簡などが並ぶ。(福本真理)