総ひのき造りで本格的な設備を備えた吉田能舞台=鹿島市中村

ワークショップで能の衣装や面について解説する佐野登さん(右)=鹿島市中村の吉田能舞台

 閉鎖の危機にあった鹿島市中村の「吉田能舞台」を保存、活用する動きが広がっている。故吉田祐彦・吉田病院院長が1986年に私財を投じて建設した総ひのき造りの本格的な能舞台で、能楽公演のほか市の文化祭などでも利用されてきた。娘の西川真理子さん(72)=島根県=が「舞台を活用して能の文化を伝えていきたい」と今春から再開させ、能楽のワークショップを開いている。

 吉田さんは観世流謡曲名誉師範で同市文化連盟会長も歴任し、能舞台は能楽と地域文化の振興を目的に病院の隣に建設した。檜皮(ひわだ)ぶきの屋根を構え、床下には音響効果を高める陶器の大きなかめがつり下がる。鏡板の松は、親交があった同市の日本画家の故岩永京吉氏が描いた。300人以上を収容する観客席や楽屋も備える。

 吉田さんは2018年に亡くなり、施設の老朽化もあって閉鎖が検討されたが、西川さんが「両親が愛した能の文化を伝え、せっかくの舞台を地域の方にも利用してもらいたい」と再開を決意した。能楽の重要無形文化財保持者で宝生流能楽師シテ方の佐野登さん(東京都)や鹿島高の同級生の協力を得て3月から月1回、能楽の魅力を伝えるワークショップを始めた。

 11日に開かれた4回目では、佐野さんが衣装や面などの道具を解説し、市名産の酒を題材にした謡曲「猩々(しょうじょう)」を参加者と一緒に謡った。佐野さんは「個人が建てた能舞台としては全国でも有数の立派な設備。次世代に継承していくためにも、ワークショップをきっかけに能に親しんでもらえれば」と話す。

 今後は参加者と「肥前鹿島謡隊」を発足させ、来年に舞台で発表会を開く予定にしている。(山口源貴)