自身の待遇や身分に関する「改革」は、先送りするのが、国権の最高機関の姿なのか。150日間にわたった通常国会が閉幕、与野党は事実上の参院選に入った。しかし、この国会では、政治のサボタージュとも言うべき国民に対する裏切りが繰り返された。その最たるものは、国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の見直しが放置されたことだ。

 「第2の財布」とも呼ばれてきた文通費を巡っては、日割り支給とすることで与野党が合意し、法改正にこぎ着けた。ところが、肝心の使途公開や未使用分の国庫返納に関しては、今国会中に結論を出すと申し合わせたものの、自民党が後ろ向きの姿勢を崩さなかった。一義的には自民党、そして「清潔な党」を標榜(ひょうぼう)しながら、背中を押せない公明党の責任と批判されても仕方あるまい。同時に、結束して実現を迫れなかった野党陣営にも反省すべき点はある。

 結局、文通費は名称変更により、事実上使途が拡大、既得権益にお墨付きを与えた形だけで、いわば“食い逃げ”に終わった。野党の要求をのめば短期間で決着するにもかかわらず、のらりくらりと引き延ばし、最終的に突っぱねたのは、数のおごりにほかならない。

 自民党の慎重論の背景には、使途を公開されたら困る事情があるのは容易に想像がつく。何に使えるのか、基準すら示せなかったのは、旧文通費の使い勝手の良さが重宝されているからだろう。つまり、自由に使えるお金が欲しいのである。それは細田博之衆院議長が、期末手当などに触れることもなく、議長なのに毎月支給される歳費(給与)は「100万円しかない」、普通の衆院議員は「手取り70万、60万円くらい」と嘆いたことに象徴されている。

 自民党総裁たる岸田文雄首相の責任も重い。期限を区切って議論をすることではないと答弁、何ら指導力を発揮することはなかった。

 この問題が与野党協議のテーマになって2国会を経過しても、時間を浪費するだけで、改革に背を向ける立法府の体たらくに、政治不信は高まる一方だ。

 もう一つの怠慢は、参院の「1票の格差」是正に向けた選挙制度改革の結論も棚上げした点だ。与野党でつくる参院改革協議会が山東昭子議長に提出した答申は、各党の主張を並べたにとどまり、具体的な方向性を示すことができなかった。

 次回2025年参院選での制度改革を目指して論議を進めるというが、そもそも参院の選挙制度改革は、15年成立の改正公選法の付則で、19年選挙までに抜本的な見直しを行い、必ず結論を得ると規定したのが出発点だ。それを「6増」という弥縫(びほう)策でごまかし、約束を履行しない状況が続く。

 選挙制度に関する論議は、各党の利害がぶつかり、政党間協議で合意点を見いだすのは容易ではない。ならば第三者機関に参院の役割も含む検討を委ねるときではないか。いつまでも「やっているふり」は、通用しない。

 民間企業や多くの地方議会などでは当たり前のことすらできない国会の惨状を、私たちは目の当たりにした。参院選で1票を投じる際には、どの政党が「永田町の常識は世間の非常識」であったのか、それも重要な物差しにしたい。(共同通信・橋詰邦弘)