全国で立地が進む風力発電設備が、ミサイルなどを感知する自衛隊のレーダーの支障となることが分かり、防衛省が一部の事業者に計画の変更を相次いで要請していたことが11日、複数の関係者への取材で判明した。政府が設定した洋上風力発電の「有望な区域」の一部で設置しないよう求めた事例もあった。政府は設置の運用見直しも含め検討する方針だ。

 防衛省は防衛上の理由から具体的な事例を明らかにしていないが、既に10件以上の事業が計画の変更や調査の対象となった。ただ陸上で防衛を理由に設置を制限する法律はなく、安全保障上の「穴となりかねない状況」(政府関係者)だ。計画変更を要請された民間事業者からは、風力発電を推進する経済産業省と安全保障を担当する防衛省の連携不足を指摘する声が上がった。

 防衛省などによると、自衛隊が使用する各種レーダーは、物体に対して電波を発信し、反射した電波を受信して、その物体の位置を特定する。しかし風力発電設備の大型風車がある場合、電波が遮断されたり、風車から受けるレーダーの反射が大きくなってミサイルや航空機などの物体が発する微弱な電波が風車からの反射波に埋もれたりして、探知が困難になる。

 陸上の風力発電設備は沿岸部や山間部などで立地が進むが、レーダーの測定範囲と一部が重複。神埼市の脊振山など全国28カ所にある警戒管制レーダーや無線通信などを阻害する可能性がある。高さ100メートル超に及ぶ設備もあり、気象庁のレーダーによる観測に支障が出たケースもある。レーダーや自衛隊の訓練などを理由に計画を変更した事業者は「決められたルールの中で計画を立てていたのに、突然指摘されて困った。経産省と防衛省で連携すべきだった」と証言した。

 政府が「再生可能エネルギー拡大の切り札」と位置付ける洋上風力では、経産省が全国の適地5カ所を促進区域に指定。これらに続く「有望な区域」などの設定も進むが、青森県沖の有望な区域内で地対空ミサイルのレーダーに影響が出る箇所があるとして、防衛省が関係者らに風力発電を設置しないよう求めた。

 防衛省関係者は、北朝鮮の相次ぐミサイル発射や、中国やロシア機による領空侵犯の恐れが近年増加傾向にあるとして「風力発電の導入と防衛を両立するため、制度設計の見直しも含め検討していきたい」と話した。(共同)