これで幕引きとは言わせない。全ての国会議員の範となるような説明責任を自らが率先して果たすことが、三権の長にある者の責務である。

 法律で定められた1票の格差是正案に異を唱えたのに加え、週刊誌でセクハラ疑惑などを報じられた細田博之衆院議長に対する不信任決議案が、自民、公明両党の反対多数で否決された。議長個人の言動にかかわる不信任案提出は異例という。

 立憲民主党が挙げた不信任の理由は4点だ。自身が提案者となり成立させた改正公選法に基づく衆院の格差是正の10増10減案に「地方の政治家を減らし、都会で増やすだけが能ではない」と繰り返し反対論を訴えた振る舞い。議長の待遇を「毎月もらう歳費(給与)は100万円しかない」と嘆き、国会議員の歳費も低いのだから、議員定数を増やすべきだと説いたこと。いずれも公の席での発言なので、弁解の余地はないだろう。

 法律の規定を無視するかのような不見識さと無神経さ。議員に支給される他の手当などに触れずに、市民の金銭感覚と乖離(かいり)した見解を披露する姿は、立法府の長としての品格に著しく欠け、その資質に疑問符を付けざるを得ない深刻な事態と言える。

 さらに、深夜に「今から来ないか」と電話で東京都内の自宅マンションに誘われたり、メールで何度も食事に呼ばれたりしたという複数の女性記者の証言、衆院選の公示日以降に選挙区の島根1区に在住する地方議員計11人に、労務費として計約6万5千円を支払ったとされる二つの問題が週刊文春で報道された。

 前者はこれまで3週にわたって掲載され、野党から十分に説明するよう求められたが、細田氏は「事実無根」と否定、出版社側に抗議し、「訴訟も視野に検討したい」と事務所を通じてコメントを発表しただけだ。後者は地方議員が選挙運動に従事していれば、公選法に抵触する可能性があるとの指摘も出ている。

 事実無根ならば堂々と記者会見や国会の場で疑念を晴らせばいい。国会が閉幕すれば、事実上の参院選に突入し、やり過ごせると考えているのならば大間違いだ。

 「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑が持たれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」。これは立法府が定めた政治倫理綱領の一節である。議長が順守できないならば、他の国会議員も「右へならえ」とだんまりを決め込む状況を招いてしまうではないか。

 不信任決議案を否決して議長を「信任」した形の自民、公明両党は細田氏と同じ重い責任を負った。自民党はガバナンスコードで「疑念を持たれた議員は国民に対して丁寧な説明を行う」と規定、公明党の山口那津男代表は「疑惑や疑問に対し、丁寧に説明責任を尽くしてほしい。ふさわしい言動を期待したい」と語っているが、その言葉通りに、実行させてもらいたい。

 立法府は、安倍晋三氏が首相時代、「桜を見る会」の前夜祭問題などを巡り、118回もの事実と異なる答弁を許しながら、十分な説明をさせる場を設けることができなかった。2人の三権の長の不誠実な姿勢が、国会の権威喪失をもたらしたことを、与野党議員は自覚しなければならない。(共同通信・橋詰邦弘)