推理小説家としても知られる京極夏彦さんによる物語と、圧倒的描写力で描かれる怪談絵本。
主人公の少年がおばあさんの家で暮らすことになったところから物語は始まる。高い天井の暗がりがどうしても気になり、目を向けると“ある存在”を目撃してしまう。人間とは不思議なもので、見たら絶対後悔すると分かっていながらもついつい見てしまうことがある。少年も例に漏れず見てしまったのだろう、その存在を。
この絵本には、もう一つ注目していただきたい点がある。“猫”だ。作中のいたるところに何匹も描かれているのだ。表紙と裏表紙も含め、猫が出ていないページはない。一体何匹出てきているのか、黙々と数えてみるのもこの作品の一つの楽しみ方だ。
おばあさん、猫、自然、懐かしさを感じる雰囲気…、こんなにもほっこり要素がそろっているのに、隙間風が吹いているような冷たさとゾワゾワする感覚がある。これは少年が感じている、えたいの知れないものに対しての恐怖なのかもしれない。
少年は一体なにを見たのか。最後まで油断は禁物だ。(岩崎書店/1650円)
(コンテンツ部・池田知恵)