決起大会で茂木敏充幹事長(左から2人目)の激励を受けた福岡資麿氏(左)=5月29日、佐賀市のガーデンテラス佐賀ホテル&マリトピア

 自民党の茂木敏充幹事長は上機嫌で杯を重ねた。立候補予定の現職福岡資麿氏(49)の決起大会を翌日に控えた5月28日。佐賀市の佐賀牛レストラン季楽(きら)で開かれた党県連の留守茂幸会長らとの懇談会は4時間半におよび、メニューにはない呼子のイカを取り寄せ、舌鼓を打った。

 「演説もうまいし、議運委員長もしっかりやっている」。福岡氏が所属する派閥の会長でもある茂木氏からは「今度勝てれば次は間違いないから。頼むぞ」と入閣をほのめかす発言もあったという。一瞬、場の空気が変わったのは出席者の一人が2015年の知事選に触れた時だった。茂木氏は応じず、別の話題に切り替えた。

 当時、選対委員長だった茂木氏が菅義偉官房長官と主導して知事選の推薦候補を決め、それが保守分裂選挙につながった。これに反発した今村雅弘衆院議員を比例名簿順位で冷遇したのも茂木氏だった。あれから7年半。党第2派閥のトップとして次期首相候補にも挙げられる茂木氏。ある県連幹部は「恩讐(おんしゅう)を超え、酒を酌み交わせた。一枚岩で参院選に臨める」と手応えを語った。

 懇談会の4時間前、留守県連会長は大きな懸案にようやく区切りを付けた。公明党県本部の中本正一代表との選挙協力協定書の調印式。2016年の福岡氏の前回参院選から国政選挙で続けてきた協定だ。自民県連関係者は「ここまでこぎ着けるのに今回ほど苦労したことはない」と明かす。

 相互推薦を巡り両党本部間できしみが生じ、その余波で県組織同士の調整も難航した。自民に苦い記憶がよみがえる。昨年秋の衆院選佐賀1区で、公明による自民公認候補の推薦が公示日に間に合わない異例の事態となっていた。

 選挙区は自民、比例は公明の候補者に投票を呼び掛ける選挙協力。公明関係者からは「前回の衆院選で佐賀県は他県と比べ、自民から票が出ていない。協力関係のバランスが悪い」との声が上がる。公明が九州地区から全国比例代表に擁立するのは新人の窪田哲也氏(56)=福岡市。知名度不足は否めない。県内で自民から2万3千票-。これまで以上の票の上積みを要求した。

 5月下旬、留守氏は福岡氏を伴い、公明党の支持母体・創価学会の幹部を福岡市に訪ねた。約1時間の会談で幹部が迫った。「公明党本部が福岡氏に、自民県連が窪田氏に推薦を出す相互推薦の形にしたい」。留守氏は「持ち帰らせてもらう」と首を縦に振らなかった。

 留守氏は県関係衆院議員にも意向を尋ねた。選挙区で連敗する議員の中には「推薦しては」との声もあった。福岡氏は「今後の国政選挙につながる協力関係を構築してほしい」と注文した。留守氏は「県組織同士で築いていた協定書の調印こそ、相互推薦にも勝る」と公明を説得。公明党本部の推薦が決まったのは26日、協定書の調印は28日。福岡氏の決起大会の前日だった。

 自民の県関係国会議員の中で最も選挙に強い福岡氏が岸田内閣の高い支持率を追い風に戦う今回の参院選。県連関係者からは「消化試合」との楽観論も聞こえる。過去に獲得した25万票を目標にしようとした留守氏に福岡氏が反発した。頭をよぎるのは投票率の低下だ。初めての選対会議を開いた6月4日。朝から街頭に立った福岡氏はつぶやいた。「衆院議員時代に負けた時よりも反応がない」。上滑りの危機感、無関心との戦いも強いられている。(栗林賢)

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 有力視される参院選の公示まで2週間を切った。佐賀選挙区(改選数1)は自民、公明が推す現職に、立憲民主、共産、NHK党、参政党が擁立する新人4人が挑む乱戦の構図となりそうだ。決戦目前の各政党の動きを追った。