永六輔さんは中学生の時、NHKの番組に投書し、初めて謝礼をもらった。自著『職人』に思い出を書いている。あまりにうれしかった永さん。近所の金箔(きんぱく)押しの職人さんに話したら、ピシッと言われたという◆職人さんは「それはよかった、もらっとけ」と言った後に続けた。「でも、おまえさん、これから大きくなっていくと、何でくれるんだかわからない金というものが、ときどきあるからな。それは、絶対もらっちゃいけない。自分でなぜくれたのかわかる金だけをもらえよ」と◆山口県阿武町で給付金4630万円が誤って振り込まれた問題。発覚から世間を騒がせてきたが、ほぼ回収を終えたと昨日の社会面にあった。なぜくれるのか分からない金だったはずなのに、受け取った代償は大きい◆収賄の罪に問われた吉川貴盛・元農相の有罪確定を伝える記事もあった。鶏卵生産大手から受けた現金500万円について「政治活動の応援との趣旨で、賄賂の認識はなかった」と主張していたが、判決は農相の立場にあって「非常に悪質」と指摘した。なぜくれるのか、自分勝手に解釈しても通用しない◆正当な労働によらず、苦労しないで得た金はあぶく銭という。泡はすぐにはじけて、身につかない。持続化給付金の不正受給を巡るニュースも続いている。職人さんの教えが染みる。(知)

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