7月10日投開票が見込まれる参院選まで1カ月となった。

 岸田文雄首相が自民党を勝利に導けば、衆院で「1強多弱」と称される国会勢力図が参院でも固定化する可能性がある。それを是とするのか、非とするのか。衆院議員より任期が長く、解散もないことから「熟議の府」と呼ばれた参院の今後の在りように影響する選挙になろう。

 自民、公明両党に支えられた首相のこれまでの政権運営や国会論戦、各党の参院選公約を吟味し、投票先を判断する期間としたい。

 通常国会は今月15日に閉会し、参院選の公示はその1週間後の22日が想定されている。定数248のうち改選される半数の124(選挙区74、比例代表50)に加え、非改選の選挙区欠員1を補充するため、計125議席を争う。

 昨年10月に政権を発足させた岸田首相は在任1カ月足らずで踏み切った衆院選で、自民党の単独過半数を確保した。この間、めぼしい成果は上げておらず、期待先行の選挙結果だったといえる。

 立憲民主党が提出した岸田内閣の不信任決議案は、細田博之衆院議長に対する不信任決議案とともに否決されたが、今回の参院選は全国の有権者レベルで岸田首相の実績が初めて評価される国政選挙になる。

 争点としては、感染者数が減少傾向にあっても万全の備えが要求される新型コロナウイルス対策のほか、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う物価高騰への対応、先進国の中でも低迷している賃金水準改善への取り組みが挙げられる。

 5月の日米首脳会談で岸田首相が表明した防衛費の「相当な増額」や、他国領域内でミサイル発射を阻止する「敵基地攻撃能力」保有も、平和主義を国是とする日本にとって重要テーマだ。

 150日間に及んだ今国会は、多数を占める与党ペースで審議が進み、これらの課題に関し首相が明確な方針や根拠を示さない場面が少なからずあった。

 参院選に向け批判を受けないよう「安全運転」に徹したとされるが、国会軽視で、国民に対し不誠実な態度と指摘されてもやむを得まい。首相には選挙戦で有権者の選択に資する具体的な説明を求めたい。

 首相が参院選でも衆院選並みの成績を残せば、政権基盤は強固になり、衆院解散・総選挙は遠のくとの見方が出ている。衆院議員の任期は2025年秋まであるからだ。

 自民「1強」体制こそ、首相が難題に対処するため欠かせないという「政治の安定」であろうが、政策が国民より党内の意向に左右される弊害を生みかねない。

 経済財政運営の指針「骨太方針」策定を巡り、首相の「聞く力」が自民党の有力者ばかりに向けられたように見えたのは、その兆候といえるのではないか。

 参院が「熟議の府」らしく国会論戦を活性化させ、幅広い民意をすくい上げるためには、立民など野党陣営が一定の勢力を維持する必要があろう。

 政党の独自性は尊重されねばならず、参院選で統一候補を擁立する選挙区が限定されたのは仕方ない面がある。だが、掲げた公約の実現可能性、有効性について説得力ある訴えができなければ、有権者の野党離れが一層進み、存亡の機に直面すると肝に銘じるべきだ。(鈴木博之)