1846年、佐賀藩では天然痘が流行した。予防には種痘が効果的と知った10代藩主鍋島直正はオランダからワクチンを取り寄せるように命じ、49年、息子の淳一郎(直大)に接種した。佐賀城で行われた種痘の絵がその様子を伝えている◆接種の成功によって種痘は藩内、全国へと広がった。新型コロナに襲われている現代でも、ワクチン接種には副反応などを心配する人がいる。情報が少ない当時を想像すれば、息子への接種に大きな不安があっただろう。その決断にも進取の気性がうかがえる◆天然痘は紀元前から死に至る疫病として恐れられたが、医学や公衆衛生の進歩によって減少した。世界保健機関(WHO)は1980年に根絶を宣言。見聞きする機会も減ったが、天然痘に類似した感染症「サル痘」が欧米を中心に報告され、再びニュースで取り上げられるようになった◆サル痘は顔や体に発疹が出るほか、発熱やのどの痛みなどの症状が表れる。予防には天然痘ワクチンが有効とされ、各国は感染拡大を警戒してワクチン確保を進めている。日本もバイオテロ対策の一環として生産・備蓄しているという◆武器にもなるほどウイルスは人類の脅威だが、感染症に対しては新型コロナで経験を積んできた。サル痘も正確な情報を基にして過度に恐れず、冷静に状況を見守りたい。(知)

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