野田里子さんの第1歌集「紙と鉛筆ときみ」書影

 白石町の野田里子さん(71)が、第1歌集「紙と鉛筆ときみ」(ミューズ・コーポレーション)を発行した。いつも短歌を応援してくれる「夫へのラブレター」だという初めての歌集に、平易な言葉で日常を歌った約300首を収めた。

 パソコン操作の習得に励んでいた2004年ごろ、夫の康誠さん(75)から佐賀新聞読者文芸欄への投稿を勧められ、橋田蕗のペンネームで短歌を始めた。「作品が載ると夫は喜んで、20部ほど新聞を買っては親戚に送っていた」と笑う。読者文芸欄年間賞や県文学賞の二席など、着実に評価を重ねてきた。

 15年ごろからは病に伏す康誠さんの看護で、短歌から遠のいた。しかし闘病する康誠さんのためにと一念発起し、過去作を集めて歌集の編さんに挑んだ。読者文芸年間賞に輝いた「すてたいと思う荷があるこの日ごろたとえば紙と鉛筆ときみ」など、淡々とした言葉の中に鋭い実感がこもる歌が並ぶ。

 病で記憶が途切れがちな康誠さんが「完成を報告すると、思いがけず『良かったな、おめでとう』と言ってくれた」と目を潤ませる。「読まなくても、お守りみたいに枕元へ置いてて」と言うと「読むくさ」と康誠さんは笑顔で返した。「夫はそれをすぐに忘れてしまうかもしれない。けど、それでもいい」

 歌集を出版し「自分の中で何かが吹っ切れた」と、4月からは本名で新聞への投稿を再開した。野田さんは「この歌集はずっと私を応援してくれる、夫へのラブレターのようなもの」と笑顔を見せる。

 歌集はA5判143ページ、1760円。問い合わせは野田さん、メールアドレスsatokon911@gmail.comまで。(花木芙美)