日常生活に直結する食料品やガソリンなどの燃料費、電気・ガス料金などが相次いで値上げされ、家計を直撃している。

 政府は燃油価格抑制のための補助金支給や低所得の子育て世帯への5万円給付などに取り組んでいるが、痛みを受けている人々に確実に十分な支援が届いているだろうか。効果を検証し、必要に応じ見直しや追加対策も検討するべきだろう。

 その際、重要になるのは公平性と実効性だ。支援対象を、余裕のある層も含めて幅広く取れば効果は薄まる。経済的な困難に見舞われている世帯や中小企業に絞り込むことも考えていいのではないか。

 今回の値上げは、新型コロナウイルス感染の落ち着きによる需要の復活、ロシアのウクライナ侵攻を受けた世界的な原油・穀物相場の上昇、急激に進む円安などが相まって輸入価格を押し上げているのが原因だ。

 石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は増産で合意したが、規模が小幅にとどまったため、市場は反応しなかった。ウクライナ危機の出口が見えてこなければ、原油相場の本格的な反落は望めないと覚悟した方がいい。

 主要食品会社が年内に実施したか予定している値上げは、帝国データバンクの調査によると1万品目を超え平均値上げ率は13%に上るという。小麦などの基礎的な食品とエネルギーの多くを輸入に頼る日本経済の急所を突かれた格好だ。

 しかし産業構造の変革は一朝一夕でできるものではない。望ましい食料、エネルギーの自給向上は国際情勢と密接に絡む。経済安全保障の観点からの見直しも重要だ。これは中長期的課題として取り組むしかない。

 現状でできることは値上げによる痛みの緩和だ。しかし、現在実施されている政策の支援対象や仕組みについては疑問視する声も出ている。

 値上げによる不利益は何も燃油だけではない。食料品や電気料金もそうだ。なぜ燃油だけに価格抑制のための補助金が支給されるか。価格抑制は購入者全員に恩恵が及ぶ。商用車で仕事に向かう低所得層が払うガソリン代と、高級車でレジャーに出かける富裕層が払うガソリン代は、補助金で等しく引き下げられている。

 こうした状況は公平ではなく、財政資金が政策目的に沿って適切に運用されているとは言えない。

 日本は物価が上がらないデフレに苦しみ、日銀は大規模な金融緩和で物価を上げようとしてきた。だが今回の物価上昇は、景気の拡大に伴って消費が増え、賃上げにもつながる「良性」の物価上昇ではなく、コストが価格を引き上げる「悪性」だ。

 企業間の取引価格を示す企業物価指数は4月、過去最高の上昇率だった。これまでは経営努力で一定程度コストを吸収し価格を抑制できたかもしれないが、今後はコストをほぼそのまま価格に上乗せせざるを得ない事態も十分想定され、値上げの加速が懸念される。

 外貨建て輸入価格を下げることはできないが、円が高くなれば少しは衝撃を弱められる。日銀は金融緩和を継続しているが、それだけでいいのだろうか。金利抑制と円安是正を両立させる道はないのか。思考停止に陥ることなく打開策を模索したい。(共同通信・高山一郎)