絶対的な権力者の下で、自由な言動が抑え込まれる。機嫌を損なえば、どんなひどい目に遭うか分からない。重たい空気を感じながら、じっとしているしかない-。北朝鮮などではなく、日本、それも「自主創造」を掲げる大学の話である◆今年1月20日付の「日本大学新聞」が手元にある。日大の学内新聞で、学生記者が取材、執筆、編集に携わっている。1面には「新生日大へ不退転の一歩」と大きな横見出し。田中英寿前理事長の脱税事件などを受けた「再生会議」の設置を伝えている◆組織を牛耳っていた田中前理事長。ワンマン支配は職員にとどまらず、学生までも萎縮させた。一連の不祥事について、学生記者は全員で話し合ったという。アメフトの危険タックル問題の時も書いていない。だから、今回も書かない。書けば何らかの報復があるのではないか、新聞発行が続けられないのではないか。1面コラムを担当した学生は「誰もがおびえていた」と吐露している◆新しい体制への移行を進める日大は卒業生の作家林真理子さんを理事長に迎える。「母校を何とかしたいという思いはずっとあった」と林さん。まさに、火中の栗を拾う覚悟だろう◆1面コラムの名称は「清流」。最後は「母校再生への道筋を報じたい」と強い決意で締めていた。新理事長と共に、清流の学府に。(知)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。