江北・ふるさと再発見編

  自分たちが暮らす地域の現状や課題を学び、自分たちが望む地域の未来計画を描いてもらう「さが未来発見塾」。実施自治体10カ所目となるのは江北町です。今回はワークショップ(3月17、30日実施)と取材活動(4月5日実施)の様子を紹介します。塾生は江北中の現3年生の計16人。江北町の「今」を直視し、理想とするふるさとの未来像を語り合います。

地元学講座Ⅰ 佐賀新聞西部支社 小野靖久 記者(杵島郡担当)

バイパス中心に変貌遂げた町

 現在の江北町は国道34号「江北バイパス」を中心に発展してきました。1981年に片側1車線のバイパスが東部の約2㌔で完成した後、西に延びて今の形に整備されたのが99年で、2004年に4車線化されました。バイパス沿いに大型ショッピングセンターをはじめ、たくさんの店舗が出店。その南には住宅地が広がっています。町はこの約40年で大きく変貌を遂げました。

 2020年の国勢調査で、町の人口は5年前と比べて0・18%減の9566人でした。県内市町の大半で人口減少が止まらない中、江北はある程度維持できています。その背景には県の中央に位置する〝地の利〟があります。例えば県内に支社・営業所を置く企業や、県庁職員、教師、警察官といった職業の人たちは、勤務地がどこになろうと江北から通勤できます。

 人口は維持している状況ですが、町内で見れば地域間で差が生じています。バイパス南部の住宅地は比較的若い人が多く、それ以外の山間部や田園地帯は昔からの集落で少子高齢化が進んでいます。新しい住民たちに町への愛着や関心を持ってもらうために、地域の交流を促進することも大事です。

 江北は今年で町制70周年を迎え、これをきっかけに町の名前を売り出す考えです。今年9月23日には九州新幹線長崎ルート(武雄温泉ー長崎)の開業に合わせ、駅名が肥前山口駅から江北駅に変わります。反対の声もありましたが、江北の名前を広く知ってもらうべきだと町議会が承認しました。

 江北は今年で町制70周年を迎え、これをきっかけに町の名前を売り出す考えです。今年9月23日には九州新幹線長崎ルート(武雄温泉ー長崎)の開業に合わせ、駅名が肥前山口駅から江北駅に変わります。反対の声もありましたが、江北の名前を広く知ってもらうべきだと町議会が承認しました。

地元学講座Ⅱ ベリーボタン代表  北原良太 さん

「こうほくふうど」守り育てたい

 

 ベリーボタンは江北町の農家5人でつくるグループで、「こうほくふうど」をテーマに活動しています。食べ物の「フード」と文化や歴史を示す「風土」の二つの意味を込めたネーミングです。江北の魅力は食べ物だけではなく、何気ない普通の景色がきれいだったり、人とのつながりだったり、そういうものを含めて魅力なのだと感じています。

 江北出身の妻と結婚し、妻の実家の跡継ぎとして農業を始めましたが、本来は長崎市の漁師の家の生まれです。幼いころから毎日のように魚を食べていたので、実は魚があまり好きではなかったりしますが、大学卒業後に1人暮らしをした時にスーパーで買った魚を食べるようになり、家の魚がおいしかったことに気付きました。日常の当たり前のことには気づきにくいものです。皆さんが進学や就職で江北町や佐賀県を離れた時、佐賀の米や野菜がおいしかったことに気付くと思います。そんな時は実家に「お米を送って」と言ってほしいし、将来、結婚して子育てをするなら江北に戻ってきてほしい。そんなことを考えながら農業の魅力を伝える活動をしています。

 皆さんは「人が優しい」「自然が豊か」「交通の便がいい」「農業が盛ん」「食べ物がおいしい」など、江北町の魅力を挙げてくれたようですが、私もその通りだと思います。これをもう少し深掘りできたらいいと思います。探せば、気付かなかった魅力はいっぱい出てくる。食べ物のほかにも、江北町にはすてきな景色がたくさんあります。

 ベリーボタンは、自分たちの子ども世代が20歳になる2030年ごろが区切りだと思っています。そこまでに自分たちは大人として、親として、農家として、どういう町を残し、何を伝えられるかを考えていきたい。これが「こうほくふうどプロジェクト」です。江北の食や自然、文化を真剣に考えて、守り育てていきたいですね。

ワークショップ

 ワークショップでは、江北町の行政データや最近の新聞記事などを参考に、地域の魅力と課題を挙げていきました。縦軸を「魅力」と「課題」、横軸を「自分ごと(自分たちに身近なもの)」と「ひとごと(身近でないもの)」で配置し、江北町の現状を可視化しました。

 魅力としては、県の中央部に位置し、特急の停車駅や主要国道の分岐点がある特徴から「佐賀のへそ」「交通の便がいい」「駅が利用しやすい」などが挙がりました。「店が多い」「農業が盛ん」「人が優しい」「人口を維持している」といった意見も目立ちました。

 一方、課題は交通量に比例して生じる「事故の多さ」を真っ先に指摘し、「道路の環境整備が不十分」という声もありました。「川や道路が汚れている」「(開発で)田畑が減っている」「水害が多い」などの意見も挙がりました。

江北町の魅力と課題を挙げ、付箋を貼る塾生=江北中

 

取材

ものづくりの醍醐味に触れる

 地元の企業に学ぶ取材活動は4月5日、今年で江北町に進出してから58年になるイイダ靴下を訪ね、関係者から話を聞きました。

 同社の村岡一範総務部長が、1919年に奈良県御所市で創業し、64年に江北町で佐賀工場を操業、2020年に本社を江北町に移転し、現在はベトナムにも縫製工場を持っていることを紹介。町進出の理由について「労働力を求めていたことと、炭鉱閉山で佐賀県が企業誘致を推進していた」と説明しました。

 現在は医療機器製造許可を得て、着圧など機能性のある商品開発で業績を伸ばしており、「大手企業からの注文だけでなく、独自商品を育てることが大切。海外への売り込みも図っている」と方針を語りました。 塾生たちは工場で機械が靴下を編む過程も見学し、ものづくりの醍醐味に触れました。

イイダ靴下の取り組みについて説明する村岡一範総務部長=江北町のイイダ靴下

塾生メンバー(敬称略)

小笠原幸輝
平方 璃子
江口 優輝
髙野 凌輔
坂本 倖志

 

友田 柊麻
福島 優希
渕上 誠太
江口 穂佳
大隈 一輝

 

柿塚 愛実
浪瀬 妃希
福田  琴
和田なるみ