北海道電力が再稼働を目指す北海道泊村の泊原発1~3号機の安全性が争われた訴訟の判決で札幌地裁は「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、現在定期検査中の3基の運転差し止めを同社に命じた。

 周辺住民ら約1200人が2011年11月、運転差し止めや廃炉を求めて提訴。北海道電は再稼働に向け国の審査を受けていることを理由に安全性の立証を先延ばしにしてきた。判決はその姿勢を厳しく批判している。

 国の審査でも、北海道電は原子力規制委員会から再三にわたり不備を指摘され、目も当てられない状況だ。事故があれば極めて大きな被害をもたらす原発を運転し安全性を追求していく力があるのか、判決は改めて疑問符を突き付けた。

 東京電力福島第1原発事故を受け、原発の新規制基準が13年7月に施行され、規制委の審査を受けないと再稼働できなくなった。他の電力会社と共に、北海道電も泊原発1~3号機の再稼働に向けた審査を申請した。

 ところが最初からつまずいてしまう。1、2号機の炉心溶融など過酷事故対策の評価に、構造が異なる3号機のデータを流用したことを問題視され、「明確に準備不足で審査に入れる状況にない」と突き返される。

 原発敷地内の断層についても、地震を起こす活断層ではないと申請時から主張したものの、十分な証拠を示すことができず、追加の掘削調査を実施して昨年7月、ようやく主張が認められた。

 津波対策として14年に造った防潮堤が液状化で沈む可能性を指摘され造り直す羽目になったり、火山噴火の評価で古い資料を提出し批判されたり。審査は遅れに遅れ、同時期に申請した5原発10基のうち再稼働できていないのは泊原発だけだ。

 審査状況によって変わり得る北海道電の主張、立証にいつまでも付き合えないとした判決は、多くの人が納得するものだろう。今年4月、規制委に人材不足を指摘された同社は地震や津波、火山の専門家を確保すると応じた。なぜこれほどまで後手後手に回るのか、不思議で仕方がない。

 もっとも、専門家をそろえ、審査に合格したとしても大事故が起こることは、東電事故で実証済みだ。大津波に襲われる可能性が指摘されたのに、速やかに対策を取らず取り返しのつかない事態を招いた。その教訓は生かされているだろうか。

 各電力会社が技術的な安全性を追求するのは言うまでもない。一方で国や地方自治体も過酷事故が起きた場合を想定し、住民を守る対策に万全を期する必要がある。

 原発から出た放射性物質の流れをリアルタイムで把握するシステムはあるか。福島県では千人ほどしか測れなかった甲状腺の被ばく量を対象者全員について測る体制はできたか。入院患者を安全に避難させる仕組みはあるか。最新技術を取り入れ、対策の向上を追求する責任が行政にはある。

 東電や北海道電の対応からは、各電力経営陣の安全性に対する意識への疑問も浮かぶ。その点を考える手掛かりとして、政府の事故調査・検証委員会が東電会長らから事情聴取したまま非公開となっている記録の公開を改めて求めたい。

 原油高などを理由に原発再稼働を求める声が強まっている。だが、安全性をないがしろにした再稼働はあり得ない。(共同通信・辻村達哉)