ドメスティックバイオレンス(DV)や性被害、貧困など、さまざまな困難を抱える女性を支援する新法が成立した。超党派の議員立法で、2024年4月から施行される。女性の福祉増進や人権擁護を掲げ、国や自治体は支援に取り組む責務があると規定。国が基本方針を定め、都道府県はそれを踏まえて計画を作るよう義務付ける。

 市町村の計画策定は努力義務。また自治体は民間の支援団体や関係機関と調整会議を設け、支援内容を話し合う。民間団体に対する費用の補助も盛り込んだ。1956年制定の売春防止法に基づいて実施されてきた相談対応や一時保護など「婦人保護事業」の枠組みを抜本的に見直した。

 事業は「売春を行うおそれのある女子の保護更生」を目的に始まり、時代とともにDVやストーカーの被害者、さらに生活困窮者にも対象を広げた。しかしDVの相談件数は急増。若年層を狙った「JKビジネス」「アダルトビデオの出演強要」が横行するなど被害も多様化し、現行制度では支援が行き届かないという声が強まっていた。

 このため制度を売防法から切り離す。新型コロナウイルス禍で女性が直面している数々の問題が浮き彫りになり、新法制定を後押しした。保護事業をアップデートし、一人一人異なるニーズに寄り添い、権利と自立を支える仕組みを整えたい。

 警察庁によると、21年に全国の警察に寄せられたDVの相談は8万3042件に上り、01年のDV防止法施行後の最多を更新。摘発は暴行など刑法犯・特別法犯が8634件、防止法に基づき加害者に接近や電話などを禁止する保護命令違反も69件あった。被害者の74・8%は女性だった。

 内閣府も、20年度に全国の窓口などで受けた相談が19万件を超え、19年度の1・6倍に急増したことを明らかにしている。コロナ下で在宅時間が長くなりストレスが増したとみられ、保護命令の対象に精神的暴力や性的暴力を加える防止法改正が検討されている。

 また働く女性はパートや派遣社員など非正規が多く、コロナ禍による景気悪化で収入を減らされたり、解雇・雇い止めされたりした。子育てや介護の負担も増し、とりわけ、ひとり親は困窮から抜け出すのが難しい。そうした中、女性に関連する統計には自殺増も含め、厳しい数字が並ぶ。

 現行の支援制度は各都道府県の婦人相談所を中心に運営され、一時保護所や中長期の支援を担う婦人保護施設がある。しかし60年以上も大きな見直しはなく、民間団体からは、人権擁護の視点が欠けていると批判も出ていた。厚生労働省によると、保護施設の利用率は年々低下し、19年度は21・7%にとどまった。

 DV被害者などの居場所が特定されるのを防ぐためのスマートフォン禁止や外出制限などを理由に敬遠されることが多いとされる。単に施設で管理・指導されたくないという人もいるだろう。

 新たな相談体制を整備するには予算や人員などの問題もあるが、誰もが使いやすい制度でなければならない。新法で自治体との協力関係が明記された民間団体は交流サイト(SNS)などを通じてDV被害者らと接触し、シェルターを提供するなど「駆け込み寺」の役割を果たしてきた。そのノウハウを余すところなく生かしていきたい。(共同通信・堤秀司)