詩人の吉野弘さんは車の運転をしなかったため、バスを利用した。バスが登場するエッセーも多く、バスと運転手との関係に興味を持っていると書いている◆バスの運転席に座った瞬間、運転手の身体は心理的にバスの大きさまで拡大されているのではないか。車とすれ違う時はバスの胴を自分の胴として、バックする時はバスの背中を自分の背中として-。吉野さんは「空間感覚の拡大」と呼び、その空間は運転手の配慮が充実していると感謝の意を込めている◆大型車を運転した経験はないが、安全に操るのは相当の技術と緊張が必要なのは想像がつく。それだけ大変な業務のためか、見合う待遇が得られないためか、業界では運転手不足や高齢化が課題となっている◆バスやタクシーなど旅客運送に必要な第2種運転免許の年齢要件が「21歳以上」から「19歳以上」に引き下げられた。記事は若年層の人材確保に期待する業界の声とともに、若者を引きつける働き方改革の必要性を指摘していた◆路線バスを乗り継ぐ旅番組を見ていると、本数が少なかったり、空白地帯があったりして思うように進めない。路線の維持は全国的な課題で、高齢社会ではますます重要になってくる。佐賀市内を走るバスの後方にも「運転士募集」の掲示。来たれ、拡大した空間を配慮で満たしてくれる人材よ。(知)

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